ChristmasScars




12月。

寒い時期だ。

体と心、両方ともな。

「はん」

鎖屋 真人-さしや まこと-17♂こと俺は、12月が大嫌いなんだ。

「何が楽しいんだか」

周りを見りゃ、クリスマスだか年越しだかでクソ共が浮かれてる。

ドイツもコイツもおめでてぇ限りだ。

「マコトぉ〜!」

その中でも"12月24日"というのが大大大大大嫌いなんだ。

俺の誕生日であり、お袋が死んだ日でもあり。

しかも同日にな。

笑えるか?

「マコトぉ?」

俺は生まれてこの方、写真以外でお袋の顔を見たことが無い。

別に今となっちゃ見たいとも思わねぇし、むしろ勝手に産んで勝手に死んだ母親に、

蹴りの一撃でも喰らわせてやりたい気持ちだ。

そのせいで俺がどれだけ苦労してんのか、わかってんのかね?

「やっぱりココに居たぁー!」

さっきからヤケに甲高い声が耳に響いている。

「んだよ?」

「遊ぼうよっ!」

このクソ寒い日に何をして遊べってんだ。

コイツの脳ミソは何で出来てやがんだ、全く。

「バカかオメーわ」

「バカじゃないよぉ〜」

「アホたれ。こんだけ寒い日によく遊ぼうとか言えるよな?」

「体動かしたら暖まるヨ!」

一体何を食ったらそんなパーマンになれるんだ。

「せいぜい一人でハシャいでろ」

俺は胸ポケからタバコを取り出し、火を付ける。

ボシュッ

と思ったが、この遊びたがり野郎が先にライターを取り出した。

「あぁ、悪いな」

「タバコばっか吸ってるとアホになるよ?」

「何だいそりゃ?」

軽く促し、フーーッと大きく息を吐く。

「あ、そういえばもう12月になるよね」

俺の喫煙の様を嬉しそうに見てる三菱 悠-みつびし ゆう-17♀がほざく。

「だな」

「あんまり好きじゃないんだっけ?」

「ナニがよ?」

「季節」

「あぁ」

「ふ〜ん」

話が他愛も無さすぎたのか、悠は口を閉ざす。

「フーーッ」

ジュウゥゥゥ

半分程吸って、指で火を消した。

「それ、熱くないの?」

「さぁ」

「さぁって、自分でやったのに」

「お前ほど熱いヤツはいねぇよ」

悠を小バカにしてやり(バカにできてないけど)、マットの上に仰向けに寝そべる。

「ヒマだねぇ」

欠伸をしながら呟く悠。

「どっか行けば?」

投げやりに言ってやる。

「ううん、ドコ行ってもヒマだし」

だったら言うな。

「ていうか、今日のマコト冷たいね」

俺の口元を見ながら、今更な発言をしてくれる悠。

「別に」

ゴロリと俯けになる。

「そういうトコとか」

「そうだな」

ラチがあかなそうだから、適当に納得してやった。

「あ、わかった」

悠はその小さい手を俺の太腿辺りにペチペチ当てて言う。

「たまってるんでしょ?」

「はん?」

「イライラする時って、そういう時なんじゃないの?」

このスケベ女わ。

「あぁ、まぁ、当たってなくもないな」

否定するのも何か虚しいから、曖昧な表現をする。

「する?」

「あのな、お前はそういうコトしか頭にねぇのか?」

「だって」

何がだってだ。

「マコトの為だったら、何でもするから」

「はん」

そう言えば男がオチると思ったら大間違いだ。

俺は呆れ半分、鼻で笑ってやった。

「じゃあとりあえずしようよ」

「うるさい」

「だってたまってるんでしょ?」

「たまってねぇよっ!」

「何で?」

「何でってお前」

コイツほどの不思議ちゃんも珍しいったらありゃしない。

天然記念物なんじゃねぇのか?

「でもココってホント、するのにはもってこいの場所だよねぇ」

「誰も来やしねーからな」

ココは地下二階の、俺の溜まり場。

学校の敷地内のとある場所に入り口があって、その場所はほとんどのヤツらは知らない。

いや、知ってるヤツは俺とこのアマを含めて、たった三人だけ。

先公ですら知らねぇんだから、何をしても自由だと。

「今日はどういうプレイでいく?」

「アホたれ」

まだその話をしてたのか。

「大体な、昨日ヤッたばっかじゃねぇか」

「そうだっけ?」

この女。

「やれやれだ…」

そう言って俺はまたタバコをくわえる。

ボシュッ

それに悠が火をつける。

「キャバクラじゃねぇんだから」

なんとなく突っ込む。

「別にイイジャン」

「何がだよ?」

「私が好きでやってるんだから」

「迷惑だって言ってんだよ」

軽く一蹴し、思い切り煙を吸い込む。

「午後の授業どうする?」

悠が、まるで何か喋ってなきゃ気が済まないような感じで話し掛ける。

実際そういう女だけどな。

「さぁねぇ」

吐く煙で輪を描きながら適当に答える。

「ちょっと、何でそんな退廃的なのぉ?」

顔に似合わず難しい単語を言葉にする悠。

「さぁねぇ」

うるさいから黙れという表情を隠した言葉を放ってやる。

「何も考えてないだけなのね」

指で挟んでいたフィルターが90度程曲がる。

「あのなぁ」

コイツには言葉を読み取るという機能が無いのか。

「あ、ちょっと待て」

俺はズボンのポケットから携帯を取り出し、時間を確認する。

「お前、そろそろ帰れ」

フィルターのヒン曲がったタバコを灰皿(ビール瓶だけど)に落として言う。

「えー、なんでぇ?」

本当につまらないといった顔をする悠。

「お客さんが来るんだよ」

俺はスッと立ち上がり、それとなく身だしなみを整える仕草をする。

「女の子?」

「バカ、野郎だよ」

ゴミ箱にツバを吐き、深呼吸をする。

「別に良くない?」

「邪魔だから行けって言ってんだ」

「ぶーっ」

唇をとんがらせて"怒ってますよのポーズ"をする悠。

「わかったわかった」

なんとなくこの仕草に弱い俺。

「明日また来いよ」

「ふん。いいもん、今日はずっとここにいるから」

前言撤回、コイツには強く当たらなきゃダメらしい。

「あ」

壁に飾ってあるテールランプがチカチカと点滅している。

コイツは誰かが入り口を開けた時の合図だ。

「ねぇ、なんであそこにテールランプなんてあるの?」

「知るか」

俺は早足で階段に向かう。

「あん、待ってよぉ!」

後ろからトコトコと走ってくる悠。

「…やりきれねぇな、実際」

一人渋々と階段を昇る俺だった。




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