ChristmasScars




キリンは単純でバカでアホで自己中心主義だ。

俺の言うコトを全く聞きゃしねぇ。

「で、どうよ?」

「却下」

「何でだよぅ!?」

キリンは目の前で真っ赤な顔をしている。

「筋が見えねぇ話にゃ乗りたくねぇんだわ」

そう言って俺はタバコを吸う。

ボシュッ

悠の着火によって。

「なに、やっぱ三菱とデキてんの?」

「アホたれ」

キリンこと桐 和彦-きり かずひこ-18♂を軽く促し、俺は紫煙を吐き散らす。

「ねぇねぇ?何の話?」

さりげなく割って入ってくる悠。

「オマエ、さっきから聞いてたんじゃねぇの?」

「あんまり」

「はん」

らしいっちゃらしいな。

「よし、かいつまんで話してやる」

人が集まると何だか妙に話をしたくなる俺。

つってもたった三人だけど。

「この不細工で悪名高いキリン君が、クリスマスまでに女をゲットしようってんで、

ナンパに誘いにきたワケだ。で、俺の答えはNO。わかったか?」

頷くんだか頷かないんだかわからない表現をする悠。

「おいおい、酷い言い様だな」

「事実は小説よりなんたらってな」

「それ、使い方合ってんのか?」

「やかましい。大体オマエだって"酷い"って漢字で書けんのかよ」

「いや、書けねぇ」

アホか。

「フーーッ」

しかし読めねぇのが、ナンパなんてしたコトのねぇ(多分)コイツが、

いきなりその話を俺にフッてきたコトだ。

相当デカいヤマなのか?

それとも、ホントに単なるナンパ?

重大な話があるっつーからビシッと聞いてやったんだけどな。

まぁどっちでもいいっちゃどっちでもいいが、今一つ解せねぇ。

「本当にやんねぇの?」

「あぁ」

「もったいねぇなぁ」

「何の話だ?」

「いやなに、最近見慣れねぇヤツが俺等のシマにたむろってんでよ」

「そいつらがものすごくカワイイと」

「そういうワケだ」

キリンは無駄に勝ち誇った顔をしてタバコに火をつける。

「今女いねぇんだろ?だったらいいじゃねぇか」

「うるせぇなぁ」

一体何がコイツをそんなに駆り立てるんだ。

「要するに、ナンパするってコト?」

沸いて出たように悠が発言する。

「だからオマエは一歩遅れてるんだよ」

「うぅ」

「三菱はコレ(小指を立てて)いねぇの?」

「マコトちゃん☆」

「あのなぁ」

何というか、平和な女だ。

「知ってるか?コイツ昔はバリバリナンパしまくってたんだぜ?」

「えぇーホントにぃ?」

バカがアホにクソなコトを吹き込んでやがる。

「コイツは相当軽いから、やめた方がいいぜ?」

まだ言うか。

「う〜ん」

オマエはオマエで悩むのか。

「なんなら俺が…」

「アホ」

まったく、馬鹿馬鹿しくてやりきれん。

「で、どこ高(コウ-高校のコト-)よ?」

「お、乗ってきたなコイツ」

「やかましい。どこのどいつだ?」

「名前はまだわかんねぇけど、砦(トリデ-学校のコト-)はハマ女子だ」

「女子?濱高は共学だろ?」

確か濱高の正式名称は"第二水濱(みなはま)高等学校"。

創立何年だ?20年くらいだっけか?

まぁ多分そんくらいで、ハナっから共学方向なハズだ。

俺の知り合い(♂5名程)も行ってるんだから、女子高になりましたってのは無ぇだろう。

「なんだ、知らねぇの?今年から男子高と女子高に分立したんだぜ?」

そういうオチか。

「って、別に見慣れねぇヤツってワケでもねぇじゃねぇか」

変な言い回ししやがって。

「まぁ聞けって」

一回喋りだすと止まらないコイツのクセが大嫌いなんだ。

「で、何で分立する必要があるんだ?」

「鋭いトコロ突いてきたな」

ナニがだ。

「結論から言っちまえば、校内のセクハラが問題だとよ」

「はん。よくあるコトじゃねぇか」

「それが規模が違うらしいんだよ」

「男全員が女を喰いモノにしてるとか?」

「まぁそういうコトだ」

「それで勇気ある少女が上にチクったワケか」

俺はかなり短くなったタバコを軽く吸い、水の入ったコップの中に捨てた。

「だけどよ、ヤロウの方は退学になるんじゃねぇのか?」

「そこなんだよ」

不気味なほど真顔で、キリンはタバコをふかす。

「それを止めたのが、その女なんだよ」

「はん?」

「ここばかりは意味がわからねぇ。が、チクったのが女、そして退学を必死に止めたのもその女」

「ふ〜ん」

なんとなく意味はわかる。

「彼女は女神だ」

「はん?」

キリンがボケたコトを呟く。

「男の夢を繋ぎとめてくれる、女神なんだ!」

暴走が始まった。

それもかなりヤバイ線とみた。

「彼女は周りの女の身を守り、儚い男の夢を守った。コレはもう女神としかいいようがねぇ!!」

何を狂ってるんだコイツわ。

「で、そいつを引っ掛けようってハラなワケだ?」

「そうだ。行くぞ。ハマ女子の制服は中々イイゾ」

「はん?」

「さぁ、早く行くぞ」

コイツは頭を使うという言葉を知らないらしい。

「一人で行けば?」

悠が攻撃する。

まぁ、一番もっともな話ではある。

「俺にナンパという技術は無い」

本末転倒な発言をするキリン。

しかしそこまで言い切るヤツはそういない。

「俺にやらせるんだろ?」

「そうだ」

「なるほど、それならお前は手を汚さないで済むし、高みの見物を洒落込むコトが出来るな」

「そうだ」

「悠、お帰り願え」

「はい☆」

「なっ、オマエ、正気か!?」

「正気じゃねぇのはお前の方だろ。ナニとち狂ったコト言ってやがんだ」

「そうよ、マコトはそういうのやらないんだから」

意外とナイスなフォローを加えてくれる悠。

「けっ」

いかにも不満そうに舌打ちするキリン。

「後悔してもしらねぇぜ」

キリンはそう言って席を立つ。

「もっと俺が楽しむネタだったらな」

もっともコイツのフるネタには突っ込みさえ入れないけどな。

「じゃあ、情報入れてまた来るぜ」

「もう来なくていいぞ」

「うるせぇ」

キリンは寂しさの欠片も見せず、むしろ自信満々といった表情で階段を昇っていった。

「やれやれ」

ボシュッ

俺がタバコを吸うタイミングを見極めているのか、悠は即座に火を付ける。

「行くだけでも行けば良かったのに」

「アホ」

フーーッと大きく息を吐き、タバコを吸う。

「でも変な人だよね」

「元からだろ」

「ううん、そのハマ女子の人」

「なんだ、聞いてたのか」

「うん」

「まぁ変っつーか、な」

「もしかして実は知り合いだったとか?」

「いや、なんかわかるんだよ」

「え?」

「多分そいつは俺に似てる」

「マコトに?」

「あぁ。まぁ、興味無ぇけどな」

俺は早くもタバコを投げ捨てる。

プッ…ガガッ…。

その時、壁に引っ掛かっている無線から無機質な音が流れた。

「ナニ、何の音?」

「無線だ。キリンと連絡する時使うワケ」

「仲良しなんだね」

「やかましい」

俺は壁に向かって「何だ」と言う。

「ガ…ガガ…どうした、来ねぇのか?」

あのアホわ。

「だから行かねぇっつってんだろ!」

思い切り叫んでやる。

大体アイツは入り口付近にいるクセに、何でわざわざこんなコトするんだ。

「ガ…16時に駅前…待ってる」

プツッ

キリンは単純でバカでアホで自己中心主義だ。

俺の言うコトを全く聞きゃしねぇ。




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