出会いと別れ




家に着いた。

さっそく自室に向かう俺。

しかし、厄介なコトに巻き込まれたもんだ。

つくづく俺の不幸を恨む。まぁ今に始まったことじゃないのだが。

「・・・・」

部屋の中には、圭が一人眠って・・・いない。

「あ、何処行ってたのよー!」

「何処って・・」

「私一人ぼっちにしてさー」

「あぁ、昼飯いらないのか」

「へ?」

俺の頭に何となく、勝った、と言う語が浮かんできた。

「あーそうだったのか、ゴメンゴメン。それじゃゴハンにしようか」

「お前・・病気だったのか?」

「う〜ん・・何か気分が悪かったのは確かね」

もう直っているじゃないか。

「それじゃ、いっただっきーます」

圭が俺の持っていた袋からパンを奪う。




「そう言えば、学校サボっちまったな・・」

おおかた食べ終わった頃、俺が口を開いた。

「まぁいいんじゃないの。結果オーライってことで」

結果が無いから言ってるのに。

「具合のほうはどうだ?」

「ちょっとクラクラするけど、さっきよりはマシみたい」

「そうか、よかったな」

「うん・・ありがとね」

ガラにもなく圭が感謝をこめる。

しかし、それとは別に、一瞬にして場が重くなった気がする。

何か変な気分だ。

「これも一つの思い出だな・・」

「そ、そうだね」

やはり場が重い。

「どんな気分なんだ?」

「何が?」

「生まれ育った町に別れを告げなければならないっていうのは」

「そうだね・・・すごい、寂しいよ」

圭の顔も寂しそうになる。

「今までここで暮らしてきたのに、なんで離れなくちゃならないんだろうって・・なんで手を離さなきゃならないんだろうって・・・」

「・・・・」

「私・・イヤだよ・・・別れたくないよ・・・」

圭がポロポロと涙を流し始めた。

「俺も、圭と別れるのはツライな」

「私も・・・アンタと別れたくないよ・・」

「・・・・・」

見つめ合う俺と圭。

「・・・・・」

その時、

ピ〜ンポ〜ン ピ〜ンポ〜ン ピ〜ンポ〜ン

インターホンがすさまじい勢いで連打される。

ピ〜ンポ〜ン ピ〜ンポ〜ン ピ〜ンポ〜ン ピ〜ンポ〜ン ピ〜ンポ〜ン

「ちょっと出てくる」

「あ・・・うん」

何故か憂鬱気味になる圭。

「コラー!いるのはわかってんだぞーー!!出て来ーーい!!」

聞き覚えのある声がする。とても馬鹿でかい。

「はいはい、今出るよ」

ガチャッ

俺がドアを開けた瞬間

バッッッッターーーーーーーーーーン

ドアの表面が俺の顔にぶつかる。すさまじい勢いで。

「へへへへへ〜、学校サボって何やってるのー?」

美亜ちゃんがヘラヘラ笑いながら聞いてくる。

「くっ・・・鼻が・・・・」

本当に折れそうだった。

「さては圭ちゃんと・・・」

靴を脱ぎ捨てた美亜ちゃんが俺の部屋を目指して階段を駆け上がる。とてつもなく速い。

「やばい、圭が見つかる・・」

冷静に考えてる場合じゃない。俺も美亜ちゃんに続く。



俺の部屋には俺と美亜ちゃんしかいなかった。

「あっれぇー、圭ちゃんいないね」

「あ、当たり前だ」

俺も正直驚いている。

「でも、圭ちゃんも家にいないし・・学校にもいないし・・」

「俺はちょっと風邪気味だったから休んでただけだよ」

「う〜・・まぁいいか、明日はちゃんと来てよね」

「ああ、わかった」

美亜ちゃんがやや険しい顔をして家を出て行った。

「・・・・」

それにしても、圭は何処に行ったのだろうか。

バタンッ

「あ、トイレ借りたよー」

「・・・・」

俺はもう、どうでもよくなってきた。






翌日。

俺は朝早く目が覚めた。よって圭もいない。

「たまには早めに登校してみるか・・」

俺はすぐに着替えて学校へ向かった。



教室内。

大して人気が少ないが、幸恵さんはもう来ているようだ。

「おはよう」

「あ、おはようございます・・」


ピロリロッ ピロリロッ ピロリロッ


着信・・だが、俺のではない。

「あ、鳴ってる・・」

「幸恵さんも携帯持っていたのか」

「ええ・・一応・・」

「あ、番号教えてくれるかな・・?」

「あ、はい」

幸恵さんはギコちない言葉で数字の羅列を読み始める。

俺は、電話番号登録だけは出来るのだ。こればっかりはさすがに。

「アドレスもいいかな」

「あ、じゃあこれ、見てください」

アドレスが表示された携帯を渡される。俺は打つ。

「・・・・ん?」

このアドレス、どこかで見た気がする・・。

「・・・・」

打ち終わった俺は幸恵さんに告げた。

「ありがとう。あと、話がある・・・」

「話?」

「ちょっと来てくれ」

「あ、は、はい」

俺は幸恵さんを屋上に連れて行った。


「何ですか、話って・・」

「ああ・・・」

俺は話し始める。

「このメール、アンタが送ったものだろ?」

俺は、例のイタズラメールを見せる・・いや、イタズラなんかではなかった。

「え・・・」

場の空気が重くなる。おそらく、昨日以上に。

「アドレスが一致したんだ・・アンタのと・・コレ・・」

「・・・やはり、アナタだったのですね」

「・・・?」

俺の脳の回転が少し遅くなった。

「あの時・・・それは北海の地の出来事でしたね・・」

「北海道のことか?」

「ええ」

「俺、幸恵さんに会ったか?」

「ええ・・・一度だけ・・」

「・・・・」

考え込む俺。

「雪が降ってました・・」

「雪・・・か・・」

その時俺は、全てを思い出した。

「思い出した・・俺と圭が地元の子供たちと雪合戦をしていた時・・・その子供たちの付き添いの人が幸恵さん・・・アンタだったのか」

「はい・・・」

「確かあの時・・俺はアンタにアドレスを教えた・・・」

「はい・・・」

「また今度会おうって・・・言った・・」

「はい」

それ言った直後に圭に冷やかされたが。

「私・・ずっとアナタの事を思ってました」

「・・・・」

「だから、東京に来たときから、アナタにメールを送り続けました」

なるほど・・今、全ての合点があった。

「すまない・・忘れてしまっていて・・・」

ずっとそれに気がつかなかったなんて・・・俺は馬鹿だ。

「私、アナタのコトが好きです。ずっと・・ずっとこれを伝えたかったの」

幸恵さんは、今までみたいにおろおろしていたりしない。真っ直ぐな目線で、キリッとしている。いや、元からこんな感じの娘だった。

「ありがとう・・・」

だけど俺は・・・・・。
















































「今までお世話になりました」

「いやいや、こちらも娘がご迷惑を何回もかけたようで」

今日は圭がこの町を去る日。

俺は圭のおじさんと談話をしていた。

なにしろ、俺がガキの頃からお世話になった人だ。

「それにしても遅いな、もうそろそろ来てもいいはずなんだがな」

肝心の圭のやつは、中々来ない。

「そう言えばまだ聞いてませんでしたが、何処へ引っ越すのですか?」

「ああ、今度は長崎のほうに仕事が入ったんでな、一応そっちの方でマンションを借りたんだ」

「長崎か・・長旅になりますね。道中気を付けて下さい」

圭のおじさんは列車が好きで、何処へ行くにも列車を使う。そのせいか、えらく時間がかかるらしいが。

「お、来た来た」

圭らしき人物の影が遠くから走ってくる。

「ゴメンゴメン、ちょっと美亜との別れに手間かかっちゃってさー。もう泣き出しちゃって大変だったよー」

「私は用事を済ませてくるから、圭、彼とも別れを済ませておきなさい」

「はーい」

それにしてもヤケにテンションが高い。

「悲しくないのか?」

「え?何が?」

「この町との別れ・・」

「もう大丈夫、たくさんいい思い出も作ったし、迷うことはないよ」

「そうか」

「・・・でも、やり残したことがあるの」

「何を?」

「・・・アンタのコト忘れないように・・その・・」

圭は下を向きながら手をいじくっている。

「・・・・・」

俺は圭の肩に手を置く。

圭はちょっとビクッとした感じだった。

「俺も忘れないさ」

俺は圭と目を合わす。

「・・・・・」

俺と圭は、口づけをかわした。

「俺のこと、絶対忘れるなよ」

「忘れないよ・・忘れられないから・・」

そしてもう一度、俺たちは唇を重ね合う。







「それじゃあ、さよならだ」

「はい、向こうに行っても、体だけは気を付けて下さい」

「・・・・」

圭が俺をじっと見ている。

「圭、苦しくなったら、皆の事や、俺の事を思い出してくれよ」

「・・うん」


列車は出発の合図をあげる。


「また、会えるよね・・きっと会えるよね!」

「ああ、必ず会える。俺が会いに行くさ」

列車は既に出発している。

俺はその列車に合わせて走っている。

しかし、そのうちに列車は過ぎ去っていった。

「また会える・・・か」

再会の時を信じて、俺はホームを後にした・・・。




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