出会いと別れ第2章 エピローグ




突き抜けるような空。

白く誇らしい雲。

限りなく晴天。

「ふわ〜あぁ」

眠い目をこすり、窓から空を見上げながら一人思索にふける。

「今日もいい天気だ」

ありがちな言葉だが、ありがちな天気だから仕方無い。

「今日は美亜ちゃんが休みか」

いつもなら家まで来るハズの美亜ちゃんが今日に限って欠席だ。

そのおかげか、どうも身体が軽く、心地が良い。

なんて、当人の前じゃとても口に出来ないけど。

「ふぅ・・・」

夏が過ぎて、そろそろ涼しくなる季節だ。

色んなコトがあって、色んな思い出があった。

それらを胸に、日々を歩いている。

そう、それが今の俺の幸せ。

何気無い景色だけど、それをただ眺めているのが幸せだ。

時にははしゃいだり、時には泣いたり。

そんな日常をこの肌で感じ取っているコトが、今の俺には至極幸せに感じるのだ。

「・・・・・」

ただまぁ、なんだか急に歳を取った感は否めないが。

キーン コーン カーン コーン

今日の最後の授業が始まる。

そして明日もまた・・・。






















「おっはよぉー!!!」

ドンッッ ズデェェェェン

朝っぱらからコケるのって、縁起悪いと思いませんか?

・・・そんなコトはどうでもいい。

「だ、誰だ!?」

俺を突き飛ばした犯人に目を向ける。

「あはっ、いい天気だね☆」

そこには美亜ちゃんが天使(自称)のスマイルで手を振っている姿がある。

「なんだ、美亜ちゃんか」

「なんだとはなんだよぉー!?」

「あ、いや、そういう意味じゃなくて・・・」

「罰としてコレ持ってね!」

パンドラの箱を俺に投げつけて美亜ちゃんは走り去る。

「はぁ・・・」

なんだかんだでコレが結構続いてて、言い返す気力すら無くなってしまった。

まぁコレも幸せ・・・って、すぐそれで完結させてしまっていいのか?

「・・・・・」

地べたに尻餅をついた状態で、空を見上げる。

「幸せねぇ・・・」

何気無い日常が幸せだと言ってはいるが、何だか物足りない感が否めない自分がいる。

昨日まではそんなコトを思うコトすら無かったのに。

「何か・・・予感がするな」

悪い予感だとは一概に言わない。

美亜という名の少女を中心に吹き荒れるモメ事があるんだろうとは言わない。

「まぁ、ね」

何だかよくわからんが、妙に納得してしまった。

こういう時は何も考えないのが一番だ。

そう、前向きに生きていけばいいんだ。

「・・・・・」

・・・何だか"前向き"な姿勢も"幸せ"さえも、どこか間違ってる気がする。

ひょっとして俺は誰かに暗示でもかけられているのか?

「・・・・・」

・・・それはそれでちょっと後ろ向きすぎるな。

「ねぇ!遅刻するよ!」

フッと我に返る。

「いつまでも座ってないで、走って走って!!」

美亜ちゃんが急かす。

「あ、あぁ」

「もう、いっつもどっかのネジが外れてるんだから!」

余計なお世話だ。

大体この美亜という子は何なんだ。

来る日も来る日も俺を悩ませて。

まぁそれは悪気があってやってるんじゃないだろうけど、何だかなぁという気分にさせてくれるんだ。

だけど、ただそれだけのコトを我慢しないで、何だというのだ?

そうだよ、俺がそれを受け入れてやらないでどうするんだ?

圭が居ない今、誰がこの風雲児美亜ちゃんを保護しろというのだ!?

「いつもすまないな」

俺は何となく謝った。

「ううん。いつものコトだから♪」

心なしか俺の顔が引きつってるように思えるのだが・・・気のせいだと思いたい。






















夏が過ぎて、約1ヶ月ほど経った。

周りは何も変わらぬまま日々を過ごす。

俺も俺で相変わらず。

「ほらー!早く行くよー!!」

俺が寝起きの頭の回転を良くする為に軽く思索にふけっていたのに、美亜ちゃんに阻まれた。

「今行くよ」

腑抜けた声で返事をする。

「早くー!学校ー!学校だよぉー!!」

わかりきってるコトを何度も言わなくても。

しかも耳元で。

「わかってるって」

「早く行かなきゃだよ!」

「え、何かあるの?」

そういえば、さっきから美亜ちゃんはどこか上機嫌だ。

「え!?」

身体をビクッと震わす。

こういう時の美亜ちゃんは大変わかりやすくてよろしい。

「た、ただ、遅刻するかなぁーって、さ!」

「何があるんだ?」

「だ、だからぁ!!」

「転校生が来るとか?」

「ブー!ハズレ」

「ちっ。って、やっぱり何かあるんだ」

「ひ、卑怯よ!!そういう戦法ばっかり!!」

「勝手に言ったんだろ」

美亜ちゃんを軽く促して外に出る俺。

「あ、待ってー!」

美亜ちゃんも続く。






「で、何があるんだ?」

「だからぁー、ホントに何も無いってばー!」

頬に空気を溜め込んで怒る仕草をする美亜ちゃん。

俺はそれをまじまじと見つめる。

「な、何?美亜の顔に何かついてる?」

「・・・今日の美亜ちゃん可愛いね。化粧変えたとか?」

「あ、わかるー!?ちょっと流行っぽく仕立ててみました☆」

「あぁ。それはすごく良いと思うよ。で、何があるんだ?」

「今日はなんとね、あの人が・・・って、ダメェェェェ!!」

バシッッッ!!!

肩を思い切り叩かれた。

ものすごく痛い。

「ホントにコレだけは言えないのぉぉーー!!」

何だか俺は半分くらい地面に埋まってる気がする。

「知りたかったら学校まで競争ー!!」

と言って、我先にと走り出した美亜ちゃん。

それは競争とは言わないのではないか。

「・・・・・」

なんてコトを考えてる場合じゃない。

何だか妙に気になるので、俺も全速力で美亜ちゃんを追った。














「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

無事校門に辿り着いた時、美亜ちゃんが

「遅いよー!」

と怒鳴りつけてくる。

「美亜ちゃんが速すぎるんだ・・・」

って、このセリフ何回目だ?

「ほらほら、早く早く!」

別に今日に限ったコトじゃないが、どうも美亜ちゃんは何かに焦っている。

「何をそんなに急ぐんだ?」

定番だがそれとなく聞いてみる。

「べ、べべ別にぃ〜?」

と言っても、そういえばこんな展開も何回かあった。

結果は全てどうでもいいようなコトばっかりだった。

なるほど、つまりどうでもいいようにあしらえというコトか。

一人で納得して歩き出す俺。

「あ、ちょっと待って!」

「ん?」

「ほんのちょっとだけ待ってて!!」

そう言うと美亜ちゃんは走れ光速の〜よろしく目にも止まらぬ速さで駆けていった。

「はぁ・・・」

急げばいいのか待てばいいのかわかりゃしない。

なんとなく太陽に目を向けてみる。

眩しい。

そんなわかりきったコトをさも初々しく模ってみせる。

「・・・・・」

むなしい。

まるで俺の存在そのものから否定されたようで感じが悪い。

・・・感じ悪くしたのは自分なんだが。

「お待たー!!」

美亜ちゃんが満面の笑みで駆け寄ってきた。

「じゃ行こうか」

そう言ってさっさと歩き出す俺のシャツの襟を引っ張る美亜ちゃん。

「ちょぉぉぉぉっと待った!!」

「痛い痛い痛い!せめて袖とかにしてくれ!!」

何故か引き止められてる俺。

「何だよ?」

不機嫌そうに話し掛けてみる。

というか正直なところ不機嫌極まりないのだが。

「えっとぉ・・・」

ニヤニヤして俺の瞳を見てくる美亜ちゃん。

「な、何だ?」

新手の心理テストとかか?

「んふふふふ」

「だから何だって?」

もしかしたら美亜ちゃんは病気に侵されているのかもしれない。

「保健室に行くか?」

「んふふ〜☆」

これはかなりの重態だ。

俺は一刻も早く美亜という女性の命を救うべく、美亜ちゃんに背を向けおんぶスタイルをとった。

「さぁ、行こう」

しかし、一向に体重が現れない。

「・・・?」

ひょっとして既に逝去された後だったか?

美亜ちゃんの方を振り向こうとして、前方を視界に捉えた刹那。

「・・・え?」

「・・・・・」

俺の目の前に見慣れた人物が直立している。

「な・・・何で・・・?」

「久しぶり・・・」

咄嗟に美亜ちゃんの方を向く。

「これは一体・・・!?」

あまりの事態に気が気じゃない俺。

「んふふふふ〜☆」

美亜ちゃんは相変わらずニヤニヤしている。

「どうして、ここに!?」

俺を動転させた張本人に問い掛ける。

「その前に言うことがあるんじゃない?」

やたらと前面に押し出した様な発言。

「え・・・?」

「んもー、せっかくの再会なんだからぁ〜!」

美亜という名の少女がボソッと呟く。

「あ・・・」

その時、数々の思い出が俺の脳裏をよぎる。

「・・・・・」

苦しみぬいた、あの時期・・・。

「・・・?」

自分を追い詰めていた、あの日・・・。

ふと、俺の中の何かが沸き立った。

溢れる涙。

だけど流してはいけない。

本能がそう諭す。

何かを始める前に一言、今頭に浮かんでるこの一言を言わなきゃいけない・・・。

「おかえり・・・!!」

「うん・・・ただいま!」

瞳にたまっていたモノが、全て流れ落ちた。




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