出会いと別れ第2章




帰ってきた。

どうやって来たのかは覚えていない。

だが、俺は自分の家の部屋の中に立ち尽くしている。

どうすればいい・・・。

何が、どうなって、俺はここにいるのだ?

わからない。

もう疲れた。

「寝よう・・・」

静かに電気を消し、俺はベッドに潜り込んだ。

「俺・・・疲れたよ・・・」

何かに頑張ったという感覚はある。

だけど、何を頑張ったのだ?

・・・答えを出せない。

俺はどうなった?

俺は何をした?

全ては闇に包まれた。

今という時間が、まるで元から何もなかったかのように。

「・・・・・」

眠いけれど、寝れない。

むしろ気持ちが高ぶってくる。

・・・まったく、気持ちが悪いぜ。

やめろ・・・俺は眠いんだ。

・・・俺の中の何が、俺自身をこうさせるのだ?

疲れているんだ。

・・・欲望の果てには何が見えた?

黙れ!

・・・きっと、鏡を見たらさぞ落ち込むだろうなぁ。

やめてくれ・・・!!

・・・俺はどうしたらいいんだろうなぁ。

・・・・・。

・・・もう、死んでしまいたい・・・・・。



























・・・お前はこの夏、何をしてた?

何もしちゃいない。

・・・何も?

そうだ。

・・・何故言い切れる?

黙れ。

俺は俺だ。

俺自身は俺のモノだ。

お前には関係無い。

・・・闇に染まってしまったのか?

それは違う。

俺は結論を得たんだ。

・・・結論?

そうだ。

俺は間違っていた。

好きだとか、愛だとか。

そんなモン、存在しないってコトにな。

・・・何故そう言える?

お前がよく知ってるだろう。

この世で信じられるのは自分だけだ。

他人に現(うつつ)を抜かしてどうするんだ?

・・・お前は独りなのか?

独り?

・・・お前の周りには誰も居ない。

居なくて当然だ。

俺は俺であって、他のヤツに邪魔はさせない。

お前も早い内に消えろ。

・・・俺が消えれば、お前も消える。

何・・・?

どういうコトだ?

・・・お前はまだ気付いていない。

何がだ!?

・・・心の奥底に眠る、お前自身を。

お前には学習能力が無いのか?

たった今、俺自身の結論を教えてやっただろう。

・・・浅いな。

何が浅い!?

・・・お前がだ。

黙れ!

お前に俺の何がわかる!?

お前は俺じゃない!!

知った風な口を聞くな!

・・・何もかもが浅はかだ。

ふん、好きなだけ言えばいい。

俺の心は揺ぎ無い。

・・・それでいいのか?

お前に俺は操れない。

・・・お前はまた、大切なモノを忘れた。

そんなモノは無い。

・・・いや、言い方を間違えた。

お前は何が言いたい!

・・・失ったというべきか。

何を失ったというんだ!

根拠の無いコトを好き放題言いやがって!

・・・お前に明日は無い。

明日が無いのはお前だ!

今すぐ消してやる!!

・・・きっと、皆悲しむだろう。

誰が、何に悲しむんだ!?

・・・お前が得た、その結論に。

お前は何なんだ!

遠回しに何かを問い掛けてるつもりなのか!?

・・・お前は愚かだ。

うるさい!

もうお前にはうんざりだ!

・・・うんざりなのはお前だ。

・・・自分の本当の気持ちもわからない無知なお前だ。

・・・自分が良ければそれでいいのか?

・・・圭は今頃、眠れない夜を過ごしているだろうな。

・・・何故わかるのかって?

・・・お前ではないからな。

・・・愚かなお前に一つ言おう。

・・・俺とお前は同じモノだ。

・・・人ではない、モノだ。

・・・ではどうして会話が出来るのか、知りたいか?

・・・ヒントをやる。

・・・お前には俺の言ってるコトが全くわからないだろう。

・・・そしてその逆も然りだ。

・・・自分の本当の気持ちがわからないなら、俺はずっと話し続ける。

・・・それに気付けなければ、お前はもう死ぬしかない。

・・・どっちかが生き残るしか術は無い。

・・・さぁ、お前の行動で答えを出してみろ。

・・・もっとも、今のお前には無理な話だがな。

・・・いいか、お前は独りじゃないんだ。

・・・もっと周りのコトに耳を傾けろ。

・・・少し喋り過ぎたか。

・・・まぁ、お前に死なれては俺が一番困るのでな。

・・・俺が誰なのか、早くわかってくれ。

・・・・・。



























「・・・・・」

朝がやってきた。

俺はすぐさま着替えに移る。

「・・・・・」

何故だか気分が晴れ晴れしている。

別に特に何も無かった。

良い夢を見たワケでもない。

むしろ、あのワケのわからないヤツが出てきてムカついているのだ。

だが、心が躍っている。

この感覚は何だ?

まるで、さっきまでノドにつっかえていたものが全て消え失せた感じだ。

嬉しいぞ。

「・・・・・」

確か今日から学校だったな。

始業式が始まる前に行こう。

時間はまだたっぷりある。

ゆっくり行けそうだ。









学校に着いた。

天気はあまり良くないが、"俺自身"は快晴のようだ。

何故だか気持ち良い。

何かあったんだっけな?

「おっはよぉー!!」

「ん・・・?」

ガシッッ!!!

ドサァッッ!!!

俺は勢いよく転んだ。

「久しぶりぃー!!元気してたぁー!?」

誰かがぶつかってきた。

いや、正確には"抱きついてきた"のか?

「何だ・・・?」

「あれぇ!?あんまり日焼けしてないんだねぇー!」

「何がだ・・・?」

「ひょっとして肌が弱いから日傘差してたとか?あははははは!!」

何だ、コイツは。

「美亜ねぇー、夏休みの間、ずっと寂しかったの・・・」

「?」

「だって、愛しのダーリンが居なかったんだもぉぉーん!」

ガシッ!ガシッ!

何故か俺は一人の女生徒に髪をグチャグチャにされている。

「やめろ!!」

「やめないわーマイダーリン!」

「やめろと言っているんだ!!」

ドンッ!!

「痛い!」

俺が肩を押すと、その女生徒は少しだけ後にふっ飛んだ。

「俺に何の用だ・・・」

「うわぁん!ダーリンがドンッ!!ってしたぁ!!」

「ダーリンだと・・・?」

何なんだ、一体。

「おい、泣くな・・・うっ!!」

不意に頭が割れるように痛くなった。

「ぐぁぁぁぁぁぁっ・・・!!!」

何だ、この痛みは。

「あれ?何でダーリンが痛がってるの?」

その女生徒が立ち上がり、俺を見た。

「やめろ・・・俺を見るな・・・!!」

頭が痛い。

このままでは割れそうだ。

俺が壊れる・・・!!

「見るなって、どしたの?」

俺はどうした・・・!?

何が起こっているんだ・・・。

「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」

ブザマに転げ回る。

「あ、わかった!新しい演技か!!」

「ぐ・・・ぐ・・・」

何が・・・どうしたというのだ!?

まさか、コイツのせいか・・・!!

くっ・・・。

「ねぇねぇ、そろそろやめないと、さすがに変な人って思われるよ?」

死ぬ・・・のか?

「あ、元から変だっけ。あははははは!!」

俺は・・・。

意識が・・・遠のく・・・。

「ぐぁぁぁぁぁ!!」

俺は立ち上がった。

ここで意識を失っては、死にかねんぞ。

「・・・ホントにどうしたの?」

「ぐっ・・・黙れ!!」

全て貴様のせいだ。

全て貴様のせいだ。

全て貴様のせいだ。

「全て・・・ぐぁぁぁっ!!」

俺は死なないぞ・・・。

何処へ行けば・・・助かるのか・・・。

「ねぇったら」

誰か、俺を助けてくれ。

・・・誰か?

俺には誰かいるのか?

俺は独りじゃないのか?

「独り・・・じゃない・・・」

「えっ?」

「俺は・・・」

家だ。

自分の家に戻るぞ。

「ぐぅっ・・・」

動け!俺の足だろ!

「俺は・・・」

死ぬか・・・死んでたまるか・・・!!

"俺自身"だ。

俺は"俺自身"だ。

全ては俺のモノだ。

誰のモノでもないのだ。

「がぁっ・・・!!」

部屋に戻れば回復するかもしれん。

俺は・・・俺は・・・。

"俺自身"は何処へ行くんだ・・・。

俺という存在は・・・誰の為に・・・?

独りじゃない・・・。

俺は俺だ!!









・・・お前は何もわかっていない。

うるさい・・・。

・・・自分に素直になれなくて暴走しているだけだ。

うるさい!!

・・・正直に思ったらどうなんだ?

黙れ!黙れ!

・・・独りじゃないのか?

お前は何なんだ!!

まさか、さっきのはお前のせいなのか!?

・・・お前のせいだ。

つまらんコトを言うな!!

・・・本当のコトを言っている。

ウソをつけ!!

何故俺は頭が痛くなったのだ!?

・・・だから、お前のせいだと言っているだろう。

何故だ・・・。

・・・全てはお前のせいだからだ。

何故なんだ!!

・・・お前は愚かだ。

黙れ!

"俺自身"はもう結論を得たハズだ!!

・・・じゃあ、何故美亜ちゃんのコトを、あたかも他人であるかのように振る舞った?

知るか!!

・・・誤魔化して済む問題なのか?

知るか!俺が知るか!

・・・落ち着くんだ。

これが落ち着けられるか!!

お前が現れたせいで、俺はめちゃくちゃだ!!

・・・お前のせいだから仕方無い。

まだ言うのか!!

・・・俺はお前ではないが、お前でもあるのだ。

意味のわからないコトを言って俺を困らすつもりか!?

・・・意味がわからないウチはずっと困っているようだな。

なんなんだ・・・。

お前は一体・・・。

・・・まずは落ち着け。

どうすればいいんだ!?

・・・いいから落ち着け、そして考えるんだ。

何を!?

・・・今まであったコトを振り返ってみろ。

何があったんだ!?

・・・自分で考えるんだ。

教えてくれよ!

俺は何をしてきたんだ!?

・・・。

おい、どうなんだよ!?

俺はどうなっちまうんだ!?

答えてくれよ!!


ピロリロッ ピロリロッ ピロリロッ


誰だ!?

ピッ

「もしもし・・・?」

「お前か!?」

「えっ・・・?」

「一体俺はどうしたらいいんだ!?」

「どうしたら・・・って?」

「お前は・・・俺じゃないのか?」

「何言ってるの・・・?」

「お前は誰なんだ!?」

「圭・・・だよ」

「誰だ・・・お前は誰だ!?」

「誰って・・・」

「"俺自身"を殺すつもりなのか!?」

「ちょっと待って・・・何言ってるの?」

「一体誰なんだよ・・・」

「私だよ。圭だよ。昨日のコトで、ちょっと・・・」

「圭・・・?」

「そう。もしかして寝言?」

「圭って・・・」

何だ、この気持ちは。

「私、ホントゴメン」

「・・・何故謝るんだ?」

俺は俺なのに。

「昨日のコトで、謝ってるの」

「昨日?」

「うん・・・」

「昨日俺は何をした・・・?」

「何って・・・ねぇ、どうしたの?」

「俺はどうしたんだ・・・?なぁ?」

「・・・アンタ、おかしいよ」

「俺がおかしいのか?」

「だって・・・変だし」

「変なのか俺は?」

「変・・・だよ。言ってる意味がよくわからないの」

俺は何を言いたいんだ?

圭・・・?

俺は圭と何したんだ?

よくわからない・・・。

「圭・・・」

「ホント、どうしたの?」

「俺は、今、わからないんだ」

「わからないって・・・何が?」

「それも・・・わからない」

「ひょっとして、私のせいだったり・・・?」

「違う。でもわからない。何もわからない」

「ねぇ?どうしたの?頭でも打ったの?」

「ぐ・・・あ・・・」

身体が熱い。

「ねぇ?」

「ぐぅっ・・・!!」

頭が割れる!

「どうしたのってば?」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「何唸ってんの?」

「頭が・・・」

「え?」

「死ぬ・・・」

「え、どうしたの?」

「俺は・・・」

「ヤバイ状況なの?」

「"俺自身"を・・・」

「ねぇ?聞こえる?大丈夫?」

やめてくれ・・・。

本当に死んでしまうぞ・・・。

「圭・・・」

「うん?」

「一旦、切るぞ・・・」

「うん・・・わかった。何か都合悪かったみたいだしね」

「いや・・・」

「ゴメンね」

「・・・また、かける」

「うん・・・あのさ」

「・・・・・」

「何かあったら、言ってくれていいんだからね」

「・・・あぁ」

「それじゃ・・・」

ガチャッ

・・・圭からの電話か。

お前が仕組んだのか?

・・・そんなワケあるか。

頭が痛いのもお前のせいなのか?

・・・それはお前のせいだ。

笑えねぇぞ・・・笑えねぇぞ!!

・・・いいか、良く聞け。

何だ!!

また俺を壊すつもりか!!

・・・お前は今、戦っているんだ。

何に戦っているんだ!?

・・・"お前自身"とだ。

"俺自身"とだと?

・・・そうだ。

何故戦わなきゃいけないんだ!

俺は俺の結論を・・・ぐぁぁぁぁぁ!!

・・・苦しんでいるのが、その証拠だ。

俺が間違っていたのか・・・!?

・・・それはお前が決めるコトだ。

そんなハズはないんだ・・・。

・・・冷静になれ。

冷静に・・・?

・・・そうだ。

・・・いつものように、山のように構えていればいい。

どうやるんだ・・・?

・・・"お前自身"が今までやってきた。

何をやってきたんだ!?

・・・落ち着け。

落ち着いたら、助かるのか!?

・・・それはお前次第だ。

何故・・・お前はそこにいるんだ?

・・・お前がいるからだ。

それは何だ・・・?

・・・俺を正しいと決めるか、あるいは正しくないと決めるかは、全てお前自身の手にかかってる。

何を言っているんだ・・・?

・・・お前はただ、自分を見失ってるだけなんだ。

どうして見失ったんだ?

・・・自分の胸に聞いてみろ。

何がだ?どうやってだ?

・・・お前の心は、繊細すぎた。

繊細・・・?

・・・だからこそ、裏を取られると一気に落ちていく。

何を言っているんだ?

・・・。

おい!なんなんだ!?

・・・一つだけ言っておく。

何だ?

・・・お前は独りじゃない。

独りじゃない・・・?

・・・そして、生きてく上で、人を必要としなくてはならない。

俺が誰かを必要としているのか・・・?

・・・だいぶ落ち着いてきたな。

落ち着いた?

・・・自分のプライドを捨てろ。

プライドを捨てる?

・・・持っているモノ全てを吐き出せ。

何故・・・?

・・・"お前自身"が在り続けるには、それしかない。

そう・・・なのか?

・・・全ては、"俺自身"の為ではあるがな。

"お前自身"の為・・・?

・・・そしてその逆も然りだ。

"俺自身"の為でもあるのか?

・・・そうだ、冷静を保て。

あぁ・・・"俺自身"は冷静だ。

・・・そして、今の自分を捨てるんだ。

あぁ・・・。


ピロリロッ ピロリロッ ピロリロッ


「もっしぃー!?」

冷静に・・・冷静になるんだ・・・。

「あれぇ?もっしもぉーし!」

「美亜・・・ちゃんか?」

・・・それでいい。

俺自身・・・もしかするとそれは、もう一人の俺の心。

「さっきはどうしたのぉー?」

「いや・・・」

「独り言ばっか言ってんだもん。心配しちゃったよー」

「独り言・・・?」

"俺自身"がか?

・・・そうだ。

「うん。なんかねぇ、うなされてたって感じだったよ!」

うなされていた・・・。

「俺がか・・・?」

「君しかいないじゃん!もしかして寝ぼけてたんじゃない?」

美亜ちゃんには"俺自身"は見えない。

・・・"お前"にも見えなかった。

圭は・・・圭は見えてたのかもしれない。

・・・あぁ。

俺のコトを一番知ってる圭は・・・。

・・・"お前自身"をよく知っていた。

俺は・・・俺は・・・。

「同じコト・・・」

「えっ?」

「圭も同じコトを・・・」

熱い雫が俺の頬を伝った。

「圭ちゃんがどうしたのぉー?あ、てか、長崎の一夜はどうだったの?ねぇねぇ?」

「俺は・・・取り返しのつかないコトをした・・・」

"俺自身"との葛藤。

"俺"で在る為に戦っていたのには・・・きっと、気付いていたんだ。

もう一人の俺は気付いていたんだ。

"俺自身"がこうならない為に、きっと・・・。

だけど、"俺"の矛先はいつの間にか圭に向いていた。

「えぇっ!?」

"俺"は何も気付いていなかった。

「美亜ちゃんも・・・ゴメン・・・」

涙がボロボロ溢れてくる。

「ゴメン・・・皆ゴメン・・・!!」

「ちょっ、ねぇ、泣いてるの!?」

俺は圭に何と言えばいいのだろうか。

長い旅のせいで苛立ちが重なった。

違う、そんなんじゃ言い訳にもならない。

「ねぇ、落ち込む気持ちはわかるけど・・・ってか、実際したコトないからわかんないケドさ」

俺は一体・・・何を・・・。

「でもさ、今の医療なら簡単にちょちょいっだからさっ!ね?」

どうして圭にあんなコトを・・・。

「確かにさ、気ぃ落とすのはしょうがないよね。でも、失敗だったんだから、ね?」

「俺・・・」

「大丈夫だよ!それに、ホラ、きっと君と圭ちゃんなら、上手くいくよ!」

「大丈夫・・・かな?」

「うん!絶対大丈夫!!」

「そっか・・・ありがと」

「それにさ、とりあえず検査薬使ってみなきゃわかんないトコあるしね!」

「え?」

さっきから美亜ちゃんは何だか励ましてくれていたみたいだが、

検査薬とは一体何のコトだ?

「もしさ、もしそのまま結婚するんだったらさ・・・式には呼んでね!!絶対行くから!!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ」

「え?ダメなのぉ?」

「そうじゃなくて・・・」

イヤな予感がする。

「何か勘違いしてないか?」

「え?」

「さっきの話、なんだと思ってた?」

「えぇっ!?そ、そそそそんなコト言わせないでよぉー!」

俺の予感は9割方的中しているらしい。

「だって・・・取り返しのつかないコトでしょ?」

「あぁ」

「男と女がいてそんな発言するってコトは、一つしかないじゃん」

嫌や汗が流れる。

「に、妊娠させちゃう可能性がある、こ、こここ行為・・・でしょ?」

時が止まった。

「ぷっ・・・」

「ち、違うの!?」

「あはははははははは!!」

「え、何?何で笑うのぉー?もしかして私間違ってた!?キャー恥ずかしい!!」

「はぁ、はぁ、はぁ、腹痛い・・・」

「何よー!もうね、美亜顔真っ赤なんだから!!」

「ゴメンゴメン」

「ゴメンゴメンじゃないよぉー!!からかうのは良くないよ!」

「というか、自分で言ったんじゃないか」

「う・・・」

「あははははは!」

「もうー!!」

「ふぅ。ありがと美亜ちゃん。おかげで大分リラックス出来たよ」

「ふーんだ!もう知らないから!」

ガチャッ

「あ・・・」

まぁ、いいか。

しかし、美亜ちゃんのその無邪気というか何も考えていないというか、

そんな姿にはある意味感心してしまうなぁ。

・・・どうだ?

何がだ?

・・・"お前自身"がだ。

あぁ、大丈夫、全て理解出来た。

・・・そうか。

"お前"には迷惑をかけたな。

・・・"俺"だからな。

ふふっ。

・・・気付けて良かったな。

"お前"のおかげだ。

・・・"俺"ではないだろう。

え?

・・・"俺"や"お前"では無い人のおかげだ。

あぁ、そうか。

美亜ちゃんや夏に会った人、そして圭のおかげでもあるな。

・・・一番大事なのは"お前自身"だ。

わかってる。

だけど、"俺自身"が生きるには、その人達が重要になってくるんだ。

・・・もう、"俺自身"は必要無いな。

だがまたこういうコトがあるかもしれない。

・・・それは"お前"次第だ。

あぁ。

・・・"お前"なら、もう大丈夫だろう。

多分な。

・・・いつでも強く在ってくれ。

"お前"の為にもな。

・・・あぁ。









「ふぅ・・・」

俺は水道水をコップに注いで、一気に飲み干した。

今までの"俺自身"の戦い、辛かった。

ただ目の前で起こっているコトを受け入れられなくて、

"俺"はいつまでも自分の中でもがいていた。

・・・けど、これからはそんな心配はいらない。

今までの"俺"は、もういないんだ。

「・・・・・」

俺は携帯を取った。

「・・・もしもし?」

「圭・・・」

圭にはすまないコトをした。

"俺自身"の中で決めなきゃならないコトを、圭に押し付けていた。

全ての戸惑いを、全ての葛藤を。

「すまなかった」

「え?」

「圭には謝らなきゃならない」

「どうして?」

「俺は本当の気持ちがわかってなかったんだ」

「本当の・・・気持ち?」

「今まで、ずっと、自分の中にあった気持ち」

「それって・・・」

「俺は圭が好きなんだ。今までも、そして、これからも・・・!」

俺の瞳からまた"俺自身"が滝のように溢れていく。

「・・・うん」

「だけど、俺の中の何かが、俺を支配して・・・」

言葉にならない。

「わかる。その気持ち、わかるよ・・・」

心なしか、圭も泣いているようだった。

「だから泣かないで?アンタが泣いてると、私も泣けてきちゃう・・・」

「こうやって、涙が零れ落ちるくらい、圭が、圭が好きなんだ・・・!!」

「私も、好きだよ・・・。大好き・・・。だから、逢いにきてくれた時、嬉しかった・・・!」

俺達はいつの間にか号泣していた。

「それなのに・・・ゴメンね。本当にゴメンね・・・」

「もういいんだ。圭の気持ち、わかったから」

「うん・・・」

「俺の気持ちも、伝えたから・・・!」

「うん・・・!」

「もう二度と、悲しませないから・・・!!」

「私も、もう・・・絶対に・・・」

「あぁ・・・絶対だ・・・」



























「・・・・・」

気が付くと、俺はベッドの上で目を覚ました。

どうやら無意識に移動して眠ってしまったようだ。

今度こそ本当に、純粋に疲れたからだろう。

「ふぅ・・・」

カーテンの隙間から朝日が差し込んでいる。

心なしか気分が良い。

「・・・・・」

感覚はしっかりとある。

バッチリ目覚めている。

ピンポーン ピンポーン ピンポーン

「な、なんだ?」

朝っぱらからインターフォンが凄い勢いで押されているぞ。

「こらぁぁー!起きろぉぉー!!」

随分と懐かしいような、それでいて昔から聞き慣れた声がする。

ドガンッ!

鉄製の物体が床に叩き付けられた音・・・って、オイ!!

「家を壊すな!」

俺は約2秒という記録的なスピードで階段を下り、怒鳴った。

「えへへぇ〜。オハヨ!!今日は大丈夫なのぉ?」

「あ、あぁ」

「っていうか、昨日は恥かかせてくれたよね!!」

「いや、アレは自分が・・・」

「罰として美亜のカバンを運びなさぁい!」

バシッッ!

「うぐっ!」

美亜ちゃんは、重さ約10kgという、別名パンドラの箱と呼ばれるバッグを俺に叩きつけた。

「さぁさぁ、早く学校に行くわよー!」

「ま、待ってくれ!」

「ぶつくさ言わなーい!はい、レッツゴォー!」

「まだ着替えてもないんだ」

「えー!?遅すぎだよぉー!」

「来るのが早すぎなんだよ」

「まぁいいや。じゃ、その間に冷蔵庫チェェック!」

「勝手にしてくれ」

俺はパンドラの箱を床に置くと、部屋に戻って猛スピードで着替え始めた。

所要時間20秒。

どうやら腕は鈍ってないらしい。

笑顔で階段を下りる。

「美亜ちゃん、支度出来た・・・って、何やってんだ!?」

「え?あ、あははは!」

台所が美亜ちゃんの部屋状態になってしまっていた。

「一体何をしたらこうなるんだ・・・」

「ま、まぁまぁ。それよりホラ、学校行こ!」

「はぁ・・・」

でも、何故か嬉しかった。

やっと普通の日常が戻ってきた。

多分そんな感じだろう。




「ねぇねぇ?」

「ん?」

学校への道中、美亜ちゃんが聞いてきた。

「昨日はホントどうしたのぉ?」

「あぁ、いや、何でもないんだ」

「圭ちゃんのコトじゃないの?」

「んー、まぁ、そんなトコかな」

「へぇー。いいなぁ。思春期だね」

「思春期?」

「そう。思春期はね、自分との戦いだよ!」

「劣等感と葛藤感、か」

「そうそう!それ!」

「・・・俺との葛藤、か」

思えば、俺もそういう歳か。

夏に旅立とうとか、まだまだ思考が青いのかもしれない。

「美亜もそういうの体験したいなぁ!」

その中には、実際にはありえないコトだってあった。

悪い意味ではないが、怨念というものに近い、現世への執着心。

人間の根本を見せつけられているようで怖かったな。

「得意のボディブローでやっつけてやるんだから!」

「いつからボディブローが得意技になったんだ?」

「昨日のボクシング見てから!えへへ〜」

でも、随分と前向きな人もいた。

心の奥底では暗くても、表向きはあくまでプラス思考だった。

「あ〜でもね、やっぱり私じゃ無理かも」

「どうして?」

「前向きだから、劣等感なんて無いもーん!」

「はは・・・うらやましい限りだ」

病気に侵され、不自由な生活を強いられている者も・・・。

「やっぱりね、人生はプラス思考!コレだよコレ!」

「そうだな」

「そうすれば、嫌なコトなんて無くなっちゃうんだから!」

「あぁ」

「でも君は随分暗いよねぇ」

「・・・そのこころは?」

「全然喋らないし、考え事ばっかしてそうだから!」

「・・・図星だ」

「でもどっちかってとネクラかもね」

「ね、ネクラはやめてくれ!」

「あはははは〜!」

・・・いや、もうやめよう。

色々なコトがあって、色々な思いをした。

それだけで十分だ。

「あー!もうチャイム鳴ってる!」

「え、じゃあ急がないとな」

「バッグ頼むね!」

「ちょ、ま、待て!」

だけど・・・だけど、これだけは確実に言える。

今年の夏、圭は居たんだ。




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