ChristmasScars




いつも俺は独りだった。

側に誰もいなくて、考えるコトはただ一つ。

この世に生を受けてから、一体どれだけ後悔しただろうか。

…いや。

俺は自分の意思で生まれたワケじゃねぇ。

あの醜い色の空から、産み落とされたんだ。

まったく情けない限りだ。

こんな自分も、俺を産みやがったアイツも。

今頃何て思ってやがるんだ?

きっと、嘲笑ってるに違いない。

俺の生き様を見て、俺の悶え苦しむ姿を見て。

ふざけんじゃねぇ。

アンタの勝手で俺は苦しんでんだ。

憎しみ、怒り、悲しみ。

この世の負の感情だけを取り込ませて、何が楽しい?

人の堕落していく姿はそんなに滑稽か?

…俺はもう後には戻れねぇ。

眩しい光さえも見えねぇ体に、何が出来るのか?

答えは一つ。

何も出来ねぇんだ。

ただただ、遠くから見つめる第三者のような存在でしかねぇんだ。

はん。

おかしな話だぜ。

"仲間"とか"友達"とか、そこにあるのは"カタチ"だけ。

いや、"型"というべきか。

だから俺は、いつまで経っても独りだった。

側に誰もいなくて、考えるコトはただ一つ…。






「…ト」

はん?

「マコト!!」

ビシッ バシッ

「痛ッ!」

気がつくと、誰かに頬を思い切り叩かれていた。

二回も。

「何すんだ」

「どしたの?さっきからボ〜ッとしちゃってさ」

悠が可哀想な人を見るような目で俺を見ている。

「はん?」

そういえば、何となく変な夢みたいなのを見てた気がした。

…末期だな。

「白昼夢?」

キリンが自分は絶対知らないだろうと思われる単語を口にする。

「知るか」

あくまで冷静に対応する。

冷静か?

「それって、疲れてるんじゃないの?」

女神さんが口走る。

「はん?」

そうか、女神サンを連れてきて、パーティかなんかをしてるんだったな。

俺は他称女神を哀れむような目で見つめる。

「何?どしたの?」

「いや、キモくて」

「何それ!?」

女神はやたらと憤激しているが、俺は見なかったコトにし、ウーロン茶を口に流し込む。

しかし女神がどうこうというよりも、普通に気持ち悪くなってきた。

12月病というのが流行っているのかもしれない。

「でさ、千佳チャンはどういう系がタイプなの?」

何故だか知らんが、悠と女神サンが割と仲良くなっているようだ。

だが当のキリンはといえば、俺達からちょっと離れた位置で体育座りをキメ込んでいる。

見た目に寄らずクールなヤツだ。

「うんとね、私は結構熱いヒトが好きよ」

キリンがビクンと揺れる。

「そうなんだ!じゃああたしと一緒だネ!」

いつからお前わ熱いモノ好きだ。

「でも、見た目が熱いというよりは、何て言うのかな、秘めた情熱なんかを持ってるヒトがいいな」

キリンが"どうせ俺にはねぇよ"といった表情をする。

寂しい野郎だ。

「うんうん、そうだよねぇー」

「縁の下の力持ち、みたいな?」

しかし、意外と普通な答えだな。

もっと素っ頓狂なコトを言うかと思えば、ここまでは至って普通の高校生といった感じだ。

「マコっちゃんは、そういう系だよねー」

「はん?」

「誰も知らないトコロで、苦労しているっていうか」

その通りだとは思うが、きっと誰にも利益が無いコトをしていると思う。

「そうなの?じゃあ、信念とか持ってるんだ?」

聞けば聞くほど腹が立つ。

いや、コイツの口から言われるとムカつくんだ。

何だろうか、きっとコイツは生理的に無理なんだ。

どんな些細なコトでも絶対受け入れちゃいけないと、俺の脳波が辿っている。

「あぁ、俺が嫌いな単語は"信念"と"情熱"だ」

「全然違うじゃん」

そう言うと女神は大笑いした。

何がおかしい。

「あ、もうこんな時間だ」

時計は丁度7を指していた。

そんなに喋ったか?

「マコっちゃん、そろそろお腹減ったヨ」

悠が泣きそうな顔で言う。

なんとなくムカついたので頭をペシッと叩く。

「上に何かあんだろ。適当に持って来いよ」

「はぁ〜い☆」

つっても大したモノは無ぇんだろうが。

「お、メシか!!」

ここぞとばかりにキリンが出てくる。

「お前、さっきから元気無ぇけど、どうした?」

「どうしたもこうしたも、ずっと腹が減ってたワケよ」

ウソをつけ。

いや、キリンならありえない話でもねぇか。

「そういえばさ」

女神サンが口を開く。

「ここって、どういうトコロなの?学校の敷地内なんだろうけど、普通こんなトコロ無いわよね」

「あぁ、隠れ家みたいなモンだ」

「そうなんだ。ここでマリファナパーティーとかやってるの?」

「やってるワケねぇだろ」

どっからマリファナが出てくるんだ。

「じゃあ、普通に溜まり場?」

「そんなトコだ」

「その割には毛布やらストーブやら、生活用品が充実してるようだけど」

「実際暮らしてんだ、ここで」

「え!ホントに!?」

「あぁ。普段は俺しか使わねぇけど、そうだな、たいていこの三人で床の間を分かち合ってるワケよ」

俺はゆっくりとタバコに火をつける。

「へぇ〜いいなー。そしたら遅くまで寝てられるわよね」

「まぁいざ行くとなるとダルくなって、結局行かないって寸法だがな」

「ダメよ、ちゃんと単位もらわないと。勿体無い」

…何か、やたらと普通な会話を繰り広げている俺。

案外こういうヤツも、一概に悪いとは言えないのかもしれん。

実際話さなければわからないというのもあるが、徐々に受け入れる範囲が広がるというか。

だが、それでも一歩間を開けた態度なのは仕方無い。

コイツにはまだ謎があるんだ。

「ねぇちょっとぉ〜」

「はん?」

見ると、階段の方から悠が顔だけを覗かせてこちらを伺っている。

「桐君手伝って〜!」

「俺?あぁ、わかった」

よっこいしょと爺臭いセリフを吐き、重い腰を上げたキリンは、そのままダルそうに一階に向かった。

「何作ってんだ、アイツ」

「ここって、厨房もあるの?」

「厨房っつーか、普通に台所はあるけど」

「何か、怪しい」

「何がよ?」

「用意周到すぎる所が」

「何言ってんだ」

そう言って俺は煙をふかす。

何だか妙に甘ったるい。

「ねぇ」

「何だよ?」

「貴方、あの子と付き合ってるの?」

「はん」

どうしてどいつもこいつもこう同じ質問をするかね。

「そんなんじゃねぇよ」

「じゃあどういう関係なの?」

「別に、ただのダチだろ」

「友達?」

「そうだ。それ以外のナニモノでもねぇよ」

友達?

まさか、自分の口からそんな言葉が出るとは心外だな。

「じゃあ、今フリーなんだ?」

「俺がか?」

「うん」

「狙うなよオイ」

「うふふふ、どうかしらね」

何だ、この場わ。

恥ずかしすぎて死にそうだ。

「そういえば、まだ名前も聞いてなかったね」

「………」

会話の流れ的に、どうも主導権を握れないでいる俺。

「あぁ、私は橘 千佳-たちばな ちか-18♀よ」

「鎖屋真人。マコトでいい」

「マコト君ね」

「だからマコトでいいって言ってんだろ」

「はいはい、マコトね」

「で、お前は何だ?チバチカでいいのか?」

「何よそれ!変に略さないでよ!」

咄嗟に思いついたナイスアイディアだったんだがな。

「普通に千佳でいいわよ」

「千佳ね」

しばらく、沈黙が走る。

何だかやるせない気分だ。

俺はタバコを指で飛ばした。

「ちょっと、消さなくていいの?」

「消えてるよ」

なんとも他愛の無い会話だ。

それにしてもコイツ、やたらと普通に突っ込んできやがる。

本当に"ただの"高校生なんだろうか。

しかしまぁ、どうも雰囲気的にはそうなんだが、イマイチ納得出来ないモノがある。

「何?人の顔、ジロジロ見て」

「別に」

妙に整った顔立ちが憎らしい。

「一つ聞いていいか?」

「何?」

「ハマ高が分裂したコト」

「あぁ、それね。それが?」

別段何かあるって顔はしない千佳。

それは高慢とか高飛車とかというよりは、自信。

そう、それだ。

ヤケに自信に満ち溢れた顔。

まるでこの世に怖いモノなど一つも無いと言わんばかりの。

「何で分裂する必要があったのか知りてぇんだが、知ってるか?」

「それは言わなくちゃいけないのかしら?」

おそらく今鏡を見たら、俺のおでこの辺りには血管が二、三本浮き出ているであろう。

だが、それが自信の表れだとわかってからは、何となくムカつきは収まっている。

きっとこういうヤツなんだ、今までも、これからも。

「知ってるんだったら聞かせてくれよ」

「別にいいけど」

割と不満そうな顔をする千佳。

「どこからどこまでを知りたいワケ?」

「全部」

「一言で片付けないでよー!」

そう言って千佳は笑う。

だから何がおかしいんだ。

「教えてもいいけどさ、それを聞いた所で、貴方にメリットはあるのかしら?」

「少なくとも、今後ハマ高の見方が変わるかもな」

「そんなの利益もクソも無いじゃない」

「そんなキレイな顔してクソとか言うなよ」

「うふふ、お世辞言っても無駄よ」

嬉しそうにしてるクセに。

「別に俺は利益だけで生きてるワケじゃねぇんだ」

「まぁ、それはそうよね」

「てか、そんなに言いたくねぇのか?」

「どっちでもいいんだけどさ」

じゃあ言えよ。

「あのね…」

ドガッ ドガッ ガタンッ!!

「お、おまたーーー!!!」

見事に階段を踏み外した悠が、何事も無かったかのように言う。

「準備が整いましたよ」

なぜかタキシードに身をつつんだキリンが言う。

お前は何キャラだ。

「…まぁ、後でゆっくり話してくれ」

俺は急かす悠を促し、ゆっくりと階段を上った。




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