出会いと別れ




俺は「喫茶ドリーム」と大きく書かれた看板の下にいた。

チャリィ〜ン

ドアを開けると同時に、風鈴のような音が鳴る。

内装はヤケにこじんまりとしている。見た目とは異なる世界。

「あ、遅い遅い〜!」

俺は圭に呼ばれると、そこの席に座った。

「おーっす」

「よう美亜ちゃん。相変わらず凄い食べっぷりで・・」

テーブルにはおびただしい量の空になった皿が。

「んふ〜」

ヤケに満足げな表情だ。

「これだけ食べて、お金あるの?」

「その為にアンタを呼んだんでしょ〜」

圭がほざく。


・・・ちょっと待て。何故俺が払わなければならないのだ?

そう告げようとした時

「マスタァ〜、チョコプリン追加〜!」

美亜ちゃんが叫ぶ。

「あ、私も!マスター、2個ね!」

ついでに圭も叫ぶ。

「・・・おい」

「ココのチョコプ超おいしいんだよね〜」

「だよね〜、それに超安いしさ〜」

応答の色が無い。

「おい!」

「それにしても、今日は結構食べたよね〜」

「んふふふ〜、美亜はまだ大丈夫!」

「よーし、今日は食いまくるぞ!」

・・ダメだ。どうやら二人だけの世界が出来てしまったらしい。

「えぇと、マスター。この二人を止めてくれ」

それしか方法は無い。

「あぃ、2つ出来たよ」

マスターまでも異次元に入り込んでしまったのか。


ピロリロッ ピロリロッ ピロリロッ


着信だ。


「アナタに会いたい・・・」


・・またか。

「どしたの?珍しいじゃん、携帯・・」

「こんなメールが来たんだが」

圭にそのメールを見せる。

「ふ〜ん、イタズラじゃないの?」

あっさりと言ってくれるな。

「俺も会いたい・・って返せば?アハハハハハ」

美亜ちゃんが爆笑する。



しかし・・・何か胸に突っかかる物があるんだが・・。

「さーてと、そろそろ精算しましょうか〜」

二人が席を立つ。

そしてその足で外へ・・・。

「待て」

「うっ・・」

「精算するんじゃなかったのか?」

「あ〜、だからね、圭ちゃんお腹痛いって!」

「それだけ食えば当たり前だ」

「・・ゴメン、後よろしく!」

チャリィ〜ン

美亜ちゃんが恐ろしい速さで駆けて行った。

「そ、そゆコトだから・・じゃね」

「お前は逃がさんぞ」

俺は圭の腕をガッチリ掴む。

「は、離してよ」

「離せるか。金くらい払ってけ」

「あ〜、お金をバカにした〜!」

「お前はお金をナメている」

「汚くてナメれませんよーだ」

「あ、今お金をバカにしたな」

「ひ、卑怯よ!」

「お前がな」

「マスタァ〜、痴漢よ〜痴漢〜!!」

「誰がだっ!」

「まぁまぁ、お二人さん落ち着いて」

マスターがなだめる。

「俺は落ち着いてる、コイツをどうにかしてやってくれ」

「何よそれ〜、偏見じゃない?」

「まぁまぁ・・」

「おい、マスターが困ってるだろ」

「うっさいわね〜。大体こんな値段つけるほうが間違ってるのよ! 何よ、4857円って!払えるわけないでしょ!!」

遂に本音をさらしやがった。

「おい・・・」

「あっ・・・」

だが、時既に遅し。マスターは今にも泣き出そうな表情だ。

「もういいよ・・今日のところは帰りなよ」

「え・・・でも」

「でも・・・って、お前が悪いんじゃないか」

「あ、美亜のせいにはしないワケ〜?美亜の肩だけは持つんだ〜、へえ〜」

「そんなこと言ってないだろ」

コイツが一番偏見だ。

というより、もう俺が払ってしまったほうが、事件の解決につながるだろう。

「マスター」

俺は丁度4857円を渡す。

「すまなかったな」

「いや、いいんだよ」

「それじゃ」

「今度はお金を持って、来てくれよな」

「ああ・・・わかったか、圭」

「はいはい」

チャリィ〜ン

俺と圭は喫茶店を後にした。

・・それにしても納得がいかないのだが。






帰り道、俺と圭は家の近くの公園に寄った。

「しかしまぁ、今回だけにしてくれよ」

「・・・うん」

おかしい。

いつもなら、俺のこのセリフにバシバシ突っ込んでくるのだが。

さすがに懲りたのだろうか。

それならそれで全然かまわないのだがな。

「ちょっと・・やり過ぎたかなって思った」

「あぁ、やりすぎだ」

「・・・怒ってる?」

「・・ああ」

それから少しの間、沈黙が訪れた。



異様に空気が重い。

と、圭が口を開いた。

「私ね・・・引っ越すんだ」

・・初耳だ。

「そうか、引っ越すのか・・」

「うん・・」

更に空気が重くなる。

「それで、この町でいっぱい良い思い出をつくろうって思った」

「・・・・」

「勿論、今日のも良い思い出だったよ」

俺から見れば悪夢に等しいんだが。

しかし、圭が引っ越すか・・・。

予想もしていなかった展開に、俺は少し寂しい気分になった。

「いつ?」

「うん・・・あと1ヶ月ある」

「案外早いんだな」

「うん・・・」

「寂しくなるな・・圭が居なくなると」

「えっ・・」

圭はキョトンとした顔で俺を見ている。

・・黙っていれば、コイツも結構可愛い顔をしている。

圭は強気な性格ながらも、男にも女にも人気がある。

そのうちの一つが、きっとこれなんだろうな・・。

「まぁ、それまで楽しく過ごそうぜ」

「うん!」

「それじゃ」

「うん、バイバーイ」


時計の針は、既に9を指していた。




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