俺はメシを買うため、購買に出かけた。
「あ、ちょっとちょっと」
圭が話し掛けてくる。
「悪いんだけどさ、コレ」
教卓の上に山積みされたノートが。
「これがどうかしたのか？」
「運んでって」
「何故だ？」
「いいから」
「よくない。大体何で俺なんだ？」
それが一番の疑問点だ。
「ぶつくさ言わないのー。そんなことばっかり言ってると 嫌われるよー」
既に嫌われているから心配無い
と言おうとしたところ、
「あの、私・・手伝いましょうか？」
幸恵さんだ。
「あ、いいのいいの。サチはご飯でも食べてなよ」
「随分態度が違うな」
「黙って運ぶ」
「はい」
これ以上の口論は無駄と察知した俺は、圭に従うことに。
「何かがおかしい気がするのだが・・」
「は？」
「いや、こっちの話だ」
「あ、そう」
簡単にあしあわれた。
「いいなぁ・・・」
幸恵さんがつぶやいた。
「ん？何が？」
「い、いえ、何でも・・」
「何かあったらすぐ言ってよね。出来ることなら何でもするから」
「はい・・有難うございます」
ほぅ・・・。
「おい」
「何よ？」
「出来ることなら何でもするんだろ。運んでくれよ」
「出来ないからアンタに頼んでんじゃない」
「ウソをつくなウソを」
幸恵さんと俺とじゃ大違いだな。
「ウソなワケないでしょー。私はか弱い女の子なんだからねー」
「どこがだ」
「ん、今何か言った？」
ギュゥゥゥ
痛い。
「腕をつねるな」
「アンタがうるさいから黙らしてあげてるの」
「余計なお世話だ」
「クスッ・・」
幸恵さんが笑っている。
「なぁ、何かおかしいか？」
俺が聞く。
「いや、あの、仲が良いなって・・・」
「誰がこんなヤツと」
「誰がこんなヤツと」
見事に圭が重なる。
「ウフフフ・・」
「さ、サチ〜」
「ご、ごめんなさい・・」
何か・・・イヤな予感がするのだが。
「さ、早く運んできてね。それじゃ」
「・・・ああ」
何だろう・・誰かが見ている？
変な気分だ。
「・・気のせいか」
だといいんだが。
俺はそそくさに職員室に向かった。
キ〜ン コ〜ン カ〜ン コ〜ン
今日の授業はこれで終了した。
俺は逃げるように帰ろうとした。
しかし、
「何処行くの〜？」
あえなく美亜ちゃんに捕獲される。
「今日何かあったっけ？」
念の為聞いてみた。
「んふふ〜、サチの歓迎会！！」
やっぱり。
「悪い、俺腹が痛いから帰る」
強引に逃げようとしてみた。
「逃がさないぞ〜！」
ガッシッ
恐ろしいスピードで、美亜ちゃんが俺を捕まえる。
「さ〜、行ってみようか〜」
今日は皿洗いでも考えておくか・・・。
俺は連れ去られた。
道端。
喫茶ドリームへの道。
俺たちはそこで口論していた。
正確には、圭と美亜ちゃんが言い争っている。
「アンパンマンは正義の味方！」
「違うよ！アイツは善良なフリをしているあくどいやつなんだよ！」
実に下らない。
今時高校生がアンパンマンで争うか。
「幸恵ちゃんはどっちだと思う？」
「え・・・」
キョトンとしている。無理もない。
「いい加減やめたらどうだ？」
俺が和解を勧める。
「アンタ、アンパンマンの奥の深さをご存じないね？」
当たり前だ。知りたくも無いぞ。
「何で圭ちゃんはアンパンマンの味方するのぉ〜？」
美亜ちゃんが泣きそうな声で尋ねる。
「美亜こそ、何で正義のヒーローを悪呼ばわりするワケ？」
「うぅ・・」
どちらかと言うと、圭が優勢のようだ。
「もうやめろよ、幸恵さんが困ってるぞ」
「あ、いや、そ、そんな事は無いです・・」
隠す必要も無いのに。
「今日は歓迎会やるんだろ？そんな下らないことで争ってないで・・・」
「でぇーい！」
「とりゃぁー！」
二人が手を出そうとしている。
ケンカはマズイ。
「やめろ！」
ベッチィィィィィィィィィィィィィィン
見事に張り手が頬に炸裂した。俺に。
「ちょっと、何やってんのよ」
「ケンカはやめろ」
「う・・・はい」
久々に圭が折れた。
「プッ・・・ククク・・・」
美亜ちゃんが何故か笑いをこらえている。
見れば、圭も幸恵さんも笑っている。
「あ、あの・・・これ・・」
幸恵さんが手鏡を出してきた。
「あ・・・」
俺の両頬に真っ赤な手形がついていた。
「あはははははははは」
「やかましい」
「だって・・手形・・手形・・あははははは」
そこまで笑うか。やった張本人なのに。
「・・まぁいいか」
結局、全てはまぁいいかで終わった。
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