出会いと別れ




チャリィ〜ン

涼しげな音と共にドアが開く。

俺たちはドリームについた。

「さぁ〜て、とりあえず座ってよね」

圭が仕切る。

「サチはそっちネ」

美亜ちゃんが異様に張り切る。

「あ、はい」

幸恵さんが素直に従う。

「ほらよ」

俺がメニューを持ってくる。

自分の首をしめているようでイヤだ。

「これとこれとこれとこれとこれと・・」

「これもいいんじゃない?」

「うん、じゃあこれも」

「マスタァ〜」

圭と美亜ちゃんの攻撃が始まった。

「決まったかい?」

マスターが愛想良く聞いてくる。

「幸恵さんはどれが?」

俺は何となく困っていたようだった幸恵さんを助ける。

「コレがおいしいんだよ〜」

美亜ちゃんがチョコプリンを勧める。

「じゃ、じゃあそれで・・」

「アンタは?」

「そうだな、俺はアイスティーにしよう」

「かしこまりました、少々お待ちくださいませ」

マスターが奥に引っ込む。

「そういえばさ、サチって何処から来たんだっけ?」

「え、えーと、北海道から・・・」

「おぉー、北の国から来たんだね〜」

「はい」

北海道か・・・。

そういえば俺も一度行ったことがあるな。圭と。

「北海道って言ったらさー、ちょっと前に行ったよねー」

さっそくこの話題が飛んできた。

「ああ、行ったな」

「キャー、新婚旅行??ねぇねぇ??」

「ち、違うっての」

「父さんの仕事ついでに、連れてってもらったんだ」

「へぇー、んで、何で?」

「何でって?」

「何で一緒に行ったの〜?二人してさ〜」

「そりゃまぁ・・何と言うか・・その・・・」

何を返答に迷っているんだ、圭は。

「き、近所だったからね」

「近所だったら行くんだ〜、へぇ〜」

「もう、今日はサチの歓迎会でしょー」

話題をすり替えようとする圭。

「そういえばそうだったね〜・・よし、後でお話しようね〜圭ちゃん」

「はいはい、後でね」

そんな下らない話をしているうちに、注文した料理が来た。

「はいよ、お待ちどうさん」

マスターが手際よくテーブルに物を並べる。

「それじゃー、サチの歓迎を祝って・・」

「カンパァ〜イ!!」

掛け声の後、グラスの音が響き渡る。




「それでさぁ〜ヒック、ウチの犬のハチがさぁ〜ヒクッ」

「そうだよなー、やっぱ猪木の時代は良かったぜー」

誰だ、酒を入れたのは。

美亜ちゃんと圭が、誰がみても分かるくらい ベロンベロンに酔っている。

「おい」

「うっさいわねー 酒持って来〜い!」

「どうしようもないな・・」

俺は半ば呆れていた。

幸恵さんの歓迎会とか言ってたのは誰だよ。

「マスター、こいつらの酔いを覚ましてやってくれ」

「む、無茶言わないでくれよ」

かなり困った表情のマスター。

「すまないな 幸恵さん」

「い、いえ、いいですよ。た、楽しかったですし」

「・・本当か?」

「え、ええ」

「そうか、なら良かった」

これだけふざけた会だったのに、楽しんでもらえたのなら問題無いだろう。

さて、問題はこの二人をどうやって我に返すかだな・・。

「どうしたものか・・」

俺は困っていた。

明日にさし使えば無ければどうでもいいのだが、 この二人の状態からすると、それはありえないだろう。

よって、目を覚ましてやるしかない。

飲酒がばれたら大変だ。

「おい、停学になるかもしれないんだぞ」

「え?明日マック定額なのぉ?平日半額のはずなのにぃ?」

ダメだ。俺の手にはおえない。

もはや回復を待つしかない。

「あの・・・」

その時、幸恵さんが口を開いた。

「ん?」

「か、完全に酔わせてしまって、眠らせてしまう、 というのはどうでしょうか?」

冗談とも本気ともとれない。

「・・酔ってるのか?」

「わ、私がですか?私は酔ってませんよ」

まぁ どのみちそれしかなさそうだ。

早めに眠ってもらおう。

「圭、美亜ちゃん、これを飲め」

「お〜ぅ、酒だ酒だ〜!」

美亜ちゃんが一瞬にして一升瓶を飲み干す。

「ちょっとアンター 何で美亜ばっかりなの?」

「キャハハ〜 美亜の方が可愛いからだよ〜」

完全に酔っ払っているな・・。

「圭、飲め」

「うっさいわねー 言われなくとも飲みますよーだ」

これまた一瞬にして飲み干す。

二人とも異常だ。

「ん〜 眠くなってきたぞ〜」

「あー ダメだ。おやすみー」

そして、一瞬にして二人が眠り落ちる。

「なぁ・・」

俺が幸恵さんに話し掛ける。

「はい?」

「どうやってこの二人は家に帰るんだ?」

「あ・・・」

まったく考えていなかったらしい。

「仕方ない、俺がひきずって帰らせるか・・・」

「も、申し訳ありません」

「いや、大丈夫だ。それに、幸恵さんもこんな時間だ。 そろそろ帰ったほうがいいぞ」

「あ、大変だ・・まだ洗濯物があるのに・・・」

「洗濯物?」

「あ、はい。親がいないので・・自分でやってるんです」

「そうか、大変だな。じゃあ尚更帰ったほうがいい」

「はい・・今日は有難うございました」

幸恵さんはペコリとお辞儀をする。

「家に送ってやれなくてすまないな」

「だ、大丈夫です」

「そうか、じゃあ気をつけてな」

「はい、それでは」

チャリ〜ン

外に出て一目散に走っていった様子がここからハッキリ見える。

よほど時間が厳しかったのかな。

「よし・・次はこいつらだ」

その前に、とりあえず勘定をすることに。

「えぇと、いくらです?」

「ちょっと待ってな」

慌ててマスターがレジに行く。

「12674円・・・だけど」

無論、そんな金は持っていない。

「皿洗いをさせてくれ」

「か、金が無いのかい?」

マスターは半分呆れている。

「じゃあ金は今度でいいから、さっさと送って行きなよ」

「いつもすまないな・・」

「なに、常連さんに対する気持ちさ」

その気持ちの割には、落ち込んでいるようだ。

「金はきっと持ってくるから、心配しないでくれ」

「わかった・・・期待しないで待ってるよ」

よほど信用が無いらしい。

というか、何故俺がこんな目に会わなければならんのだ・・。

チャリ〜ン

大きな疑問と圭と美亜ちゃんをフツフツ抱えつつ、俺は外に出た。








公園。

やはり俺は送ってやるのを断念した。

というのも、まず俺は美亜ちゃんの家を知らない。

まったくもって話にならなかった。

「あー そこそこ!16文字キック!!!」

いつの間にか猪木と馬場を入れ替えたらしい。

「寝言を言うな」

俺の声はむなしく響く。

このまま帰るというのもアリか・・。

だが、俺の良心がそれを許さない。

というより、人間として許されない行為だ。

「起きるのを待ってたら明日になっちまうな・・」

俺は強引に起こしてみることにした。

バシッッ

圭を叩く。日頃の恨みも重ねて。

「うう〜ん・・・」

バシッ バシッ バシッ

「起きろ!」

「わぁっ!遅刻するー!!」

圭が起きた。寝ぼけも織り交ぜながら。

「意外と早く起きたな」

「あれ・・・ここは??」

「公園だ」

「みんなは?」

「幸恵さんは帰した。美亜ちゃんはそこで寝てる」

「もー美亜ったら。酔って寝ちゃったのかしら」

お前もだ。

「美亜〜!!起きなさい〜!!」

美亜ちゃんはピクリとも動じない。

「チョコプリンだよ〜!」

「へぁ・・・?チョコプ・・・???」

チョコプリンで起きたようだ。

「アレレ・・ココ何処?」

圭と同じ事を言う。

「あ〜 ココ公園か〜。ところで今何時?」

「何時?」

二人して俺に聞く。

「そろそろ11時だ」

「うっそぉ〜 テレビ見たいよ〜帰してよ〜」

「美亜ちゃんの家わかんなかったから・・」

「あ〜そうだったの。それじゃ帰るけど」

「その足で帰れるか?」

足腰はフラフラだ。

「どうにでもなる〜。それじゃ、サラバだ〜」

美亜ちゃんは早々に消えていった。

「・・・」

「どうした?顔色が悪いぞ」

まさか・・・。

「ウッッッ」

「ま、待て!」

「ま、まだ大丈夫よ・・吐かない吐かない」

「そうか」

「ちょっと横になるね・・」

「ああ・・」

やはり、しばらくの間沈黙が流れる。




「そういえば、引っ越すんだったな」

思い出したかのように俺が口を開く。

「うん・・だから思い出を作るの」

「今日のは?」

「楽しい思い出に決まってるじゃない・・」

立つ事も出来ないだろうに。

「・・・・」

「そろそろ帰る・・・」

「ああ、送っていこう」

圭の足取りが怪しい。



「明日学校に行けるか?」

「当たり前じゃない」

「だろうな」

「あ、私こっちだから」

「一人で大丈夫か?」

車にひかれてもらっても困るのだが。

「一応ついてってやる」

「・・お節介ね」

「これは親切というんだ」

「ふふ、そうかもねー」

そして、圭の家に着いた。

「それじゃね」

「ああ、おやすみ」

「ん、おやすみー」

圭はそそくさと家に入っていく。

「・・・今日はセンキュね」

「ああ」

静かにドアが閉まった。


俺も、すぐに家に向かった。




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