出会いと別れ




俺は自分の部屋にいた。

「しかし今日は大変だったな・・」

そっと愚痴をこぼしてみる。


ピロリロッ ピロリロッ ピロリロッ


着信だ。

恐らく圭であろう。


「アナタに会いたい・・・」


まったく違った。

「またこのメールか・・・」

しかし、なにかしら妙な雰囲気が漂ってくる。

そう、このメール、何か懐かしい気がするのだ。

「・・・・」

考えても仕方がない。

俺はおもいきって返信する事にした。

「何と返そうかな・・」

ふと、美亜ちゃんが言っていたことを思い出す。

「俺も会いたい・・・か」

よく考えればおかしな話だ。

顔を知らない同士が会いたがるなんて。

いや、知らないのは俺だけかもしれないが。

少なくとも、俺にそんな気は無い。

「とりあえず名前から聞いてみるかな」

なんともベタな作戦だ。

しかし、それ以上の手が思い当たらない。

自分の表現の乏しさを恨む。


「名前は何て言うんだ?」


よし、これを送信すればいいんだな。

・・・。

「待てよ・・」

送信はどうやってやるのだ?

俺はあまりに無知だった。

来るメールはほとんど圭から。

たまに美亜ちゃんのもあったな。

しかし、俺はそれらに返信をした事は一切無い。

というより、する必要がなかったからだ。

「困ったな・・」

俺はとりあえず説明書を見ることに。

だが、それらしき物は見当たらない。

「捨ててしまったのだろうか・・」

あまりに都合が悪い。悪すぎる。

「まぁ 返信しなきゃいけないなんて義務も無いしな・・」

安易な考えで流し、俺はベッドに潜り込んだ。

そしてすぐに眠りについた。







ドンッッッッッ

「うおぉぉっ?!」

ドシンッッッ

俺はベッドから落ちた。

腰から。

「はいはい起きた起きたぁぁ!」

いつものように圭が怒鳴る。

「酒気はぬけたようで・・」

「おかげさまでね」

「ヤッホー!寝起き君」

「み、美亜ちゃん!?」

何故ここに美亜ちゃんがいるのだ。

「美亜ったら酔ってたらしくて、私ん家を自分の家だと勘違いして・・」

「んふ〜、酔った酔った」

感謝の意も無さそうだ。

「それにしても、男臭い部屋だね〜」

「ほっといてくれ」

「圭ちゃんとここで暮らしてるの?」

「なっななっっ何言ってるのよ!」

「いちいちうろたえるな」

「大スクープだね〜。まぁ知ってたけどね〜」

「み、美亜〜!!」

「キャハハ〜若夫婦若夫婦〜〜」

ドタッ バタッ ダンッ

二人は風のように消えていった。

「なんだったんだ・・」

俺は気をとり直して着替えに移った。

「・・何だかんだ言って、時間的には余裕があるな」

久々に朝飯を食べていくことが出来そうだ。








学校。

いつものようにホームルームが始まる。

「あ、あの・・」

幸恵さんが話し掛けてきた。

「何だ?」

「き、昨日はどうも・・」

「ああ、心配するな。いつものことだ」

「そ、そうですか」

キョトンといた表情で俺を見ている。

まぁ 無理も無いと思うが。

「さてさて、今日は2次会と行こうか〜」

美亜ちゃんが叫ぶ。

・・2次会の意味が違うと思うのだが。

「・・そうだ」

俺は思い出したかのように幸恵さんに聞く。

「こんなメールが来たんだが、どう思う?」

「はい?」

内容は、アナタに会いたい・・。ただそれだけ。

「わ、わかりません」

「そうか・・」

ちょっとだけ期待していただけに、何か残念だ。

そう、幸恵さんならどうにかしてくれるんじゃないかな、と思っていた。

・・・待て。

俺はそれ以前にやらねばならない事があった。

「おい圭」

「何よ?」

「メールの送信を教えてくれ」

「・・・・」

「ど、どうした?」

「呆れてものが言えない・・・アンタってホントバカねー」

「バカで悪かったな」

成績は圭より数段良いのに。

「説明書でも見ればいいじゃん」

「無い」

「何が?」

「説明書が」

「・・・・」

「呆れてものが言えないのか?」

「・・・・うん」

圭が珍しいものを見るかのような表情で俺をマジマジと見る。

何故か・・・悔しい。

「いいから教えろ」

「それが人に物を頼む態度ー?」

「教えてください圭様、これでいいのか?」

「ば、バカにしないでよ」

「バカにした覚えは無い」

「アンタのそれって・・天然なの??」

圭は何故かひいている。

「人間は天然動物だ」

「・・・やっぱりか」

「・・・・」

俺の何がおかしいんだろうか。

「じゃあとりあえず教えるねー」

「ああ」

「本文を書くでしょ、んでココ押すだけ。終り」

「ウソをつくな」

終わるわけが無い。

「ウソなワケないでしょー」

「本当か?」

「ホント」

「じゃあ試してやる」

電話帳から圭のアドレスを引き、メール送信の準備をした。

「いくぞ・・」

「はいはい、早くしなさいって」

ピッ・・・。

「押したぞ・・」

そのとき、

ブゥーン ブゥーン ブゥーン ブゥーン

「な、何だこの音は・・・」

「バッカねー、バイブレーションよ」

「ああ、振動のたぐいか・・」

「届いたわよ」

「何?」

「だから届いたっつってんでしょ」

「・・あながちウソでもなかったんだな」

「当たり前でしょうが、私がウソをつくわけがない」

その言葉自体ウソなくせに。

「まぁいい、助かったぞ」

「どういたしましてー」

やや皮肉っぽい言い草だ。







放課後。

俺は部活動に行くでもなく、すぐに帰路につく。

「あ、おぉーい!」

「なんだ、圭か」

「一緒に帰ろうか」

「ああ」

「ふふふーん」

ヤケに嬉しそうだ。

「ふんふふ〜ん」

やっぱ言わないと駄目か。

「嬉しそうだな。何かあったのか?」

「え?そう見える?」

何てヤツだ。

「凄いでしょ私、数学の小テスト100点だったの!」

「ほぅ・・」

「アンタは何点だったの?ねぇ?」

「いや、まぁ普通だったよ」

「やっぱり?普通?あはははははー」

俺も100点だったなんて口が裂けても言えないな。

大体、問題の構成が簡単すぎたのだ。

だから、普段ギリギリな圭でさえ満点を取ったのだろう。

おそらくその回りも。

「100点だと何かいいことがあるのか?」

「んーそうだねぇ・・特に無いかな」

「そうか」

「あー 私こっちだから。バイバイー」

「ああ、じゃあな」

圭と別れた後、俺はすぐに家に帰った。

そう、あのメールに返事を返すために。




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