Melody




「すごい・・・・・・」

「儚くていいね」

僕は遂に詩を書き上げた。

一つのギターと二人の少女の情景が結構上手く書けた・・・・・・と思う。

まぁその全貌は軽い秘密というコトにしておこう。

「やっぱり噂は本当だったんだね」

八木羅 菜乎が嬉しそうな表情で覗う。

「いや・・・・・・」

しかし、完全に否定出来ない僕も僕だ。

第一、こうやって僕の書いた詩を二人は関心そうに見ている。

…悪くない気分だ。

「うん、これなら手直しもちょっとで済みそうだね」

手直し?

「私は、結構これでもいいと思うんだけど」

「え、じゃあメロディーを変えろってコト?」

「そっちの方がいいんじゃないかしら」

「うーん、そっかー」

確かに、僕はメロディーのコトなんかには無関心で

ただ「詩を書くコト」だけに集中していた。

だから、詩かメロディーか、どっちかに合わせる為に直すワケだな。

・・・・・・ちょっと残念だ。

「ふふっ、飯田君の詩が真咲の曲に勝っちゃったね」

八木羅 菜乎が可愛い顔を更に可愛くして笑う。

こんなに可愛いのに、何故僕は覚えていないのだろうか。

「・・・・・・・・・」

二人が曲構成らしきものを練っている間に、僕は脳みそをフル回転させた。

今日の朝・・・・・・いや、違う。

確か昼辺りだと思ったんだが・・・。

昼は寝てたからよく覚えていないが、多分昼だ。

そう、それで寝てて、誰かに起こされたんだ。

・・・・・・?

何で起こされたんだっけ?

僕の脳みその回転率がやや下がる。

はて?僕は確か昼休みを利用した春眠・・・・・・。

「そうか!!」

全てを把握した。

そうだ、確か一年生の変な奴に叩かれて、それで起きたワケだ。

えぇっと・・・それから何を考えていたんだっけな。

「何だっけ?」

八木羅 菜乎に聞いてみた。

「え?」

呆気に取られた表情で僕を見る。

「私?八木羅菜乎だけど……」

そう、それはわかっている。

「いや、何処かで会わなかったっけ?」

そう、それだ!!

八木羅 菜乎という名前に何か覚えがあって、それなのだ。

っていうか、何でそのコトを僕は八木羅 菜乎本人に聞いたんだろうか。

「…今日が初めてじゃ?」

八木羅 菜乎は極めて冷静に返事をする。

・・・・・・おかしいな。

じゃあ何で僕はその名前に聞き覚えがあるのだろうか。

一年生に叩かれて、起こされて・・・・・・違う、逆だ。

起こされてから叩かれたんだ。

それで、菜乎ちゃんがどうのって……。

「あ!!」

今度は思い出した!!

そうだ、一年生に「お前菜乎ちゃんとうんたら〜」って言われて、

それが記憶に残っていたんだ。

どうりで会ったコトがないのに聞き覚えがあるワケだ。

「どうしたの?」

八木羅 菜乎が心配そうに聞いてくる。

「いや、勘違いだった、ゴメン」

「そうなの」

あくまで冷静なのがちょっと怖いな。

「でも飯田君さ、詩を書くの上手ね」

「え、そうかな?」

実際、僕は自信が無かった。

ただまぁ、雰囲気を書き表しただけだし、

多分ホンモノの詩人が見たら頭の中が「?」マークでいっぱいになってしまうだろう。

「こんなの、相当作ってないと書けないと思うな」

「あんまり書いたコトってのは無いんだけどね」

さっきから勘違いばかりされているようなので事実を伝える僕。

「それじゃきっと、才能があるんだわ」

「無い無い。無いよ」

僕はちょっと照れつつ喜びつつ笑った。

……ハッキリ言ってキモチ悪い。

「うん、オッケ。こんな感じで完成」

雪野さんがクラシックギターを掻き鳴らす。

「じゃ、ちょっと聴いてみてよ」

ジャカジャ〜ン

僕達はその音に聞き入った。

















「キレイ……」

八木羅さんがはぁ〜っとため息をつく。

「今まで作った中で一番かも」

雪野さんが嬉しそうに言う。

「メロディーが美しくて、でも詩は儚くて。そこがまた……」

八木羅さんは自分の世界に入ってしまったようだ。

「ありがとう京君!おかげですごいイイのが出来たよ」

「いや、礼には……」

実際僕自身はほとんど何もしていないのに近い。

「雪野さんのメロディが無かったら、僕は何もしてないようなものだから」

自分で言った割にはキザっちぃ上に何て謙遜の仕方なんだろう。

「いやいや!京君の詩が無かったらここまで完成度の高い曲は出来てなかったよ」

うーん、そこまで言われると素直に喜びたくなるなぁ。

「でもメロディーもすごい良かったよ。プロみたいだった」

八木羅さんがヨイショする。

「えっ?あははっ!そうかなぁ!?」

雪野さんはもうデレデレ状態だ。

「京君と一緒にデビューしちゃえば?」

八木羅さんがとんでもないコトを言い出す。

「う〜ん、でもこれで食っていきたいとは思わないんだよなぁ」

とかいってる割には目がギラギラ輝いているようだ。

「きっと高校生とか、悩みが多い人中心に売れると思うな」

「ん?そのこころは?」

「すごい悲しげじゃない。それに作り手も高校生だし、詩が若者に響きそう」

「あくまで高校生くらいにしか売れないっていう風に取っておくよ」

それでも雪野さんはニヤニヤしている。

「あ、もうこんなに暗くなっちゃったね」

八木羅さんが空を仰ぐ。

「じゃあそろそろ帰るかー」

雪野さんはギターをしまう。

「でも、この空、いい色だ・・・・・・」

僕は太陽が沈み切った空が大好きなのだ。

夜の一歩手前という感じで、ヤケに冷たい風が吹き抜ける。

でもハッキリと青暗くて、イメージはさっきの曲にとてもマッチしていた。

何かが終わる、そんなような気がする淡い感じが好きなのだ。

「飯田君も?私もこの色、好きだな」

八木羅さんがのってくる。

「何か、終わりみたいで」

僕もズバリそう思っていた。

「怖いんだけれど、そこに何かがあるんじゃないかって思っちゃう」

「きっと光は差す、そんな希望があって」

「でも叶わなくても、それでもいいかもしれない」



「時が経てばわかるから」



うまい具合にハモった。

「ヒュ〜。詩人同士熱いねぇ」

雪野さんがちゃかす。

でも案外八木羅さんとは気が合うかもしれない。

「ふふっ、偶然ってあるものなのね」

八木羅さんが照れながら僕の肩に手を置く。

「気が合うかもしれないね」

僕の頭の中を見透かすように言う。

「さぁさぁ、恋人気分は中断してさ、ファミレスで温かいモノでも食べていこうよ」

咄嗟に八木羅さんは僕から手を離す。

その照れに照れきった顔もまた……。

いかん、冷静になれ京。

「遅くまで付き合ってくれたからお姉さんがオゴッちゃる」

「え、でも、悪いよ」

「平気平気。ギター以外に金使ってないんだからさ」

「ふふっ、ありがと」

「京君も行こっ。早く早くー!」

雪野さんは子どものようにはしゃぎながらドアへ走り出す。

その時、

キィィィ〜

ドアが無愛想にもゆっくり開いた。




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