Melody




「見つかった?」

雪野さんを捜索し始めてから約2時間が経った。

町内のあらゆる所、学校付近、何処を捜しても当人は見つからない。

「家、帰っちゃったのかなぁ」

八木羅さんは半分それでいてほしいという気持ちをもとに呟いた。

「明日また学校に元気な姿で来るよ」

僕は励ますように言う。

だが、ここで解散にしてしまっていいのだろうか。

雪野さんのあの強気な性格だ。

言い方は悪いけど、暴走して三年生に突っ掛かってしまったのかもしれない。

そうとなると雪野さん自身が危ない。

しかし見つけ出そうにも手掛かりはほとんど無い。

「時間大丈夫?」

八木羅さんが心配そうに聞いてくる。

「大丈夫だけど・・・・・」

実際、裕太が誰にやられたのか気になるし、雪野さんの行方もそうだ。

「私、一つだけ心当たりがあるんだけど、行ってみない?」

「心当たり?」

「うん。悩んでる時に真咲がよく行く場所」

「じゃあ、そこに行ってみようか」

僕は八木羅さんの後を追って走った。

・・・・・・あんまり言いたくないのだが、そんな場所があったのならば

先にそこに行けば良かったんじゃないだろうか。

いや、まぁ、その、八木羅さんだから許そう。うん。

それに、友を探して我忘れる、良い響きじゃないか。

八木羅さんは必死で探していて、その心当たりを忘れていただけなのだ。

そう、そういうコトなのだ。

ならば余計に突っ込む必要はあるまい。

「飯田君?」

「えっ!?」

しまった、また脳内格闘を繰り広げてしまった。

「急に立ち止まったから・・・・・・」

「あ、ゴメン、いいんだ。それより急ごう」

慌てて弁解した割には中々な言葉を言った。

・・・・・・だからそんなコトを考えている場合じゃないのだ。

「そう?」

八木羅さんは一言だけ言うと、今度はスピードを上げて走り出した。













「・・・・・・・・・」

「真咲!!」

心当たりの場所に到着した時、真咲さんはさっきとは別人のような顔つきになっていた。

まるで虚空を見ているというか、目のピントが完全に合っていない。

「菜乎・・・それに京君・・・・・・」

「心配したんだから」

「ゴメン。でも、ね」

「裕太君なら大丈夫だよ」

八木羅さんによる慰めの儀式が始まった。

その時の八木羅さんは、こう、健気で、それでいて何処か美しいと思わせる雰囲気がある。

多分この人に慰めという行為を受ければ、普通の人ならすぐに立ち直ってしまうだろう。

「菜乎」

「なぁに?」

「ゴメンな」

「うん、いいよ」

女の子同士の友情。

そこには汗臭い男臭さなど一切無くて、可憐でいて儚い、言わば絆の証。

お互いがお互いを助け合って、でもそこには傷つくコトを恐れているモノがあって。

その無邪気な心には、どんなに無意味な行動でさえも許せてしまう。

…いいじゃないか、とてもいいじゃないか。

何だかそそられるモノが・・・・・・あ、いや、そういう意味ではなくて。

「京君」

雪野さんが半ば甘ったるい声で話してくる。

「ありがと」

「いや・・・・・・」

あ、ボクこれから塾だった!

そうして逃げ出したいほど、僕の心臓は高鳴った。

友達の彼女と割り切っていても、今の雪野さんにはハッキリ言ってドキンとさせられた。

べ、別に、深い意味ではない。

でも何だろう、この不思議な感情は。

これが"恋する心"なのだろうか。

う〜ん、僕が恋か。

ハッキリ言ってキモチ悪い。

↑このフレーズを自分で言えてしまうトコロもまたキモチ悪いワケで。

だけど、ただハッキリするのは、僕はこうして女の人と走り回ったり

何だかよくわからないけど感謝されたりするのは初めて(に限りなく近い)なので、

何をどうしたらいいのか(主に感情が)ハッキリ言ってわからない。

特に恋というのに興味は無かったけど、どうなのだろうか。

・・・・・・いや待て京。

雪野さんは裕太と付き合っているのだ。

だから僕は雪野さんを好きになったりは出来ないのだ。

・・・・・・好きになったり出来ない?

でも、ちょっとばかり心が動いたコトは事実だ。

好きになれないのではなくて、本能的なモノが拒んでいるのだろうか。

例えば僕が雪野さんと付き合ったとすると、裕太の立場は無い。

だから自然と京脳(僕の本能、または脳内。ナウい略語だね☆)が拒否反応を起こすのだ。

裕太は大切な友達(京脳が勝手に思い込んでるだけかもしれないけど)であり、

唯一の失いたくない人間なのだ。

いや、唯一ではなくて、実際問題親も失いたくはない。

今僕の両親が消え去ったとすると、僕は食べていくのに困る。

それに学校にも行けなくなってしまう。

いつもは煩わしい存在なのだけれど、いざ失ってしまうと、

きっとその大切な存在だったというコトに泣く羽目になるだろう。

僕の親はそんなに若くはない。

だから今のうちに親孝行をしておこう。

そうだ、母の日や父の日に花とかアクセサリーを買うというのはどうだろうか。

うん、それは良い。

簡明なだけに意味も伝わりやすいし、何よりお手ごろ価格で求められるからだ。

よし、そうと決まったら、まずはお小遣いの節約を始めよう。

僕は唐突に大量な程本を買い込むので、それを減らそう。

そして徐々に貯めていったお金で買うのだ。

・・・・・・さて、僕はここで一番の大きな壁にブチ当たった。

っていうか何を考えていたんだっけ?

というコトだ。

う〜ん、何だっけな。

「それじゃ、今日はもう遅いから帰ろうよ」

「あぁ、そうだね」

雪野さんと八木羅さんは話を終えてしまったようだ。

・・・どうしよう。

「京君?」

「えっ!?」

しまった、八木羅さんがいきなり話し掛けるから無駄に驚いてしまった。

「もう帰ろうと思うんだけど・・・・・・」

「あ、うん、そうだね」

「京君には一番心配かけちゃったな」

「え、あ、大丈夫だよ」

「私には心配かかってないのぉ〜?」

八木羅さんが笑いながら言う。

「京君は優しいしね」

「私は優しくないんだぁ〜?」

「あははは!冗談だよ!」

それは僕に言ったコトも含めて冗談なのだろうか。

「さ、帰ろうよ」

「うん、また明日ね」

なんだかんだで、時計は深夜0時を指していた。




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