Melody




「ふぅ・・・・・・」

僕は家に着くなり自室のベッドに転がった。

今日はいつもより相当疲れた。

でもまぁ、雪野さんが冗談を言うくらい元気になったのなら本望だ。

それに、八木羅さんという可愛い女性と知り合えた。

「八木羅 菜乎、か・・・」

つくづく不思議な女性だなぁ。

ある時は優しく、ある時は楽しく。

そしてある時は叱咤の檄を交わす。

一般的に見ればそれは"普通"なのだろうが、僕にはそれが輝いて見える。

八木羅さんの持つソレ。

優しいし、気がきくし。

とっても幸せな気分にさせてくれる人だ。

でも、僕はこうやって遠目で見てるしかない。

僕には全ての面において自信が無い。

人一倍臆病だし、世の中において肯定出来るものが比較的少ない。

何よりリストカットして笑ってる無気味なヤツなんだ。

そんな男が、あんな素晴らしい人のお目にかなうはずがないのだ。

諦めて泣き寝入りするのが一番だろう。

「でもなぁ・・・・・・」

人を好きになるという感情。

それを持ったのは、多分八木羅さんがいたからこそなんだ。

雪野さんも好きだけど、恋愛的な好きとは違うような気がする。

いや、限りなくそれに近いのかもしれない。

だけど雪野さんはダメなんだ。

裕太がいるし、何より彼と過ごしている時が一番楽しそうなのだ。

僕に、言い方は悪いけど、余計な気遣いをしてくれているようだし。

気兼ねなく付き合える、そんな関係になってくれる人が欲しい。

きっと八木羅さんなら僕の願いを叶えてくれるだろう。

でも、それ以上はきっと何も無いのだと思う。

僕はこうして八木羅さんのコトを考えているけれど、

彼女はおそらく明日の朝ご飯とかのコトで、僕のコトなんか微塵も思っていないだろう。

・・・・・・考えれば、まだ今日初めて会ったばかりだったっけ。

それじゃあ僕のコトなんか気にも止めていないハズだ。

なんだ、そう言えばそうだったんだ。

僕と八木羅さんは、今は友達の二歩も三歩も手前のトコロなのだ。

僕が喉から手が出る程欲しくても、とてもとても。

もっと工夫を凝らさなければ手に入れるコトなど皆無に等しい。

「あれ・・・・・・?」

僕は、八木羅さんが好きなのかな。

こんなにも彼女のコトを考えている。

いや、考えさせられている。

・・・どっちでもいい。

八木羅さんを好きでいるコト。

果たしてそれは許されるのだろうか。

八木羅さんは僕のコトを思っているとは万に一つも限らないのに、

僕だけ勝手に、一方的に八木羅さんのコトを考えている。

手中にしたいとも言い出した始末だ。

・・・やめよう、もう。

これ以上考えるのは失礼にあたるし、そもそも今日の僕が何かがおかしい。

友達なんていないと思っていた。

誰も好きになるコトなんてないと思ってた。

でも今日は全然違うじゃないか。

友達と一緒に居たいし、好きになっている(なりかけている)人もいる。

僕らしくない。

ダメだ、京脳はいつもよりヒドく乱れ出してしまったのかもしれない。

休まなきゃ。

今日は色々なコトがあって疲れた。

裕太の件も、また明日色々考えなくてはいけないだろう。

いや、そんな使命的なモノではない。

京脳が思っているのだ。

裕太は失っちゃいけない人間だって。

ずっと助け合っていかなきゃいけない存在なんだって。

裕太は僕にとってとてつもなく重い価値のある人間なんだ。

唯一の友達、裕太。

・・・彼の事件、きっとこじれるだろうな。

明日学校に行ったらきっと、雪野さんが怒ってて、八木羅さんが慰めてて、

僕は京脳をロースピードで回転させているのだろう。

・・・・・・光景が思い浮かぶ。

そうだ。

僕は紙とペンを取り出した。

ちなみにペンは「ドナルドが腰をクネらせている」ヤツだ。

コレは東京ディズニーランド限定のモデルで・・・・・・。

いけない、また脱線しかけている。

ダメなんだ、悪い癖なんだよ。

一度何かを考え始めると止まらないんだ。

だから人の話を聞いていない状態になってしまうんだ。

コレは大変なコトだ。

今すぐにでもやめてしまわねば、ある日とんでもないコトになってしまう。

京脳が本能的に思う。

えーっと、そう、何故紙とペンを取り出したのか、だ。

詩を書くんだ。

八木羅さんは詩を書いている。

だから僕も詩を書いてみよう。

今度はちゃんと何度も書いて、自信を持って見せられる詩を作ろう。

そして八木羅さんと笑いあったり涙流したりしよう。

僕はそれが一番幸せになれると思う。

八木羅さんが好きだし、詩を書くコトは別に嫌いではない。

いや、むしろ好きになってしまったかもしれない。

八木羅さんが書いているから・・・という理由も多々あるが(という大半だけど)、

その場の表現を詩で示すというのが面白い。

言葉を繋げていって、それでもまだ物足りなかったら雪野さんにギターを弾いてもらう。

最高じゃないか。うん。

そうと決まれば、さっそく詩を書こう。

「う〜ん・・・・・・」

何を書けばいいのだろうか?

その場の状況に応じて書けばいいのだが、今がどんな状況なのかがわからない。

マズイぞ。

「・・・・・・」

30分間、空を仰いだ。

・・・そうだ、この今の気持ちを書いてみよう!

僕は勢いよくドナルドを走らせた。

意外にもグングンと進む。

5分足らずで書き終えてしまった。

「こんな感じでいいかな」

叶わぬ恋をしている男と女の心情らしきものを表してみた。

・・・・・・うん、いいんじゃないだろうか。

明日八木羅さんと雪野さんに見せてみよう。

会話のネタにもなるしね。

「さてと・・・・・・」

僕は布団をめくり上げて中に潜り込んだ。

「明日は晴れるかな・・・・・・」




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