Melody




「おはよう!」

「あ、お、おはよう」

八木羅さんが話し掛けてきた。

「昨日はありがとね。遅くまで付き合ってもらっちゃって」

「いや・・・・・・」

八木羅さんと一緒なら何処までも・・・。

いや、そうじゃなくて。

AM8:25 高校前 飯田京は八木羅菜乎と登校す。

何てハッピーなのだろうか。

そもそも八木羅さんが僕に話し掛けてきたのが何より嬉しい。

そうだ、詩を書いたコトを報告せねば。

「八木羅さん・・・」

「なぁに?」

おお、この満面の笑みでの「なぁに?」

すさまじく僕の心臓を刺激する。

痛っ、左胸が痛い。

キューンキューンしてる。

もう気分はパチンコで無制限に出る玉を受け止めている感じだ。

それに伴い京脳も大フィーバー。

次に何を言おうかがハッキリと浮かんでくる。

「詩を書いたんだけど、良かったら・・・・・・」

「本当に?じゃあ放課後に屋上で待ってるね」

見てもらいたいんだけど・・・と言う前に、

八木羅さんはそれだけ言うと駆け出してしまった。

「あ・・・・・・」

何だか一人取り残されてしまった感じがする。

・・・もうちょっと一緒に居たかったんだけどなぁ。

まぁ、朝の校門で八木羅さんと一緒に笑顔。

これだけで良いじゃない、うん。

「飯田君!」

八木羅さんが入り口の手前で叫んでいる。

「遅刻するよ!!」

「あ・・・・・・」

しまった、もう授業が始まる時間だ!

なるほど、八木羅さんが走って行ったのはそれだったのか。

僕も校舎に向かって走り出した。

↑青春って感じでイイネ。










「おい!!」

僕の足を止めるかのような、低くて太い大声が叫ばれた。

僕に向かって言ったのではないコトを祈って振り向いてみた。

「・・・・・・」

そこには誰もいなかった。

よし、じゃあ気を取り直して教室へ向かおうか。

「おい!テメェだ!!」

またも野太い声がする。

僕はうろたえつつも四方八方を見尽くす。

だけど、それの発生源は掴めない。

「テメェおちょくってんのか?」

僕が前へ向き直ると、そこにはやはり誰もいなかった。

だけど、この声はどうやら前のほうからするらしい。

「え・・・・・・?」

よくわからなくなった僕は疑問符を投げてみる。

「ここだ!!」

一瞬たじろいだけど、下の方を見ると肌の黒い男が立っていた。

・・・小さい。

僕の身長が174(意外と大きいでしょ☆)だから、この人はきっと150前後ってところだろう。

いや、145程度かもしれない。

うん、それじゃあ気付かないワケだ。

「テメェ何菜乎ちゃんと仲良くしてんだよ?あぁ!?」

不意にその男の声が甲高いモノに変わった。

というより、さっきの声とはまったくの別物であった。

僕は目線をその男の頭上を越え、入口玄関に伸ばした。

・・・何やら不良らしき二人の男が立っている。

さっきの声は、どうやらその男達のどっちかのものだったようだ。

しかし、八木羅さんの影が無いのが気になる。

さっさと教室に行ってしまったのだろうか。

「ブッ殺すぞテメェ!」

高い声の男が叫ぶ。

しかし、ここまで高い声で「殺すぞ」なんて言われても、何だか怖いという実感が湧かない。

「おい」

目の前にさっきの男が映る。

ドゴッ!!

お腹にとてつもない衝撃が走る。

この痛みは・・・。

僕はお腹を抱えながらうずくまった。

「隆未来!邪魔すんな!」

また甲高い声が聞こえる。

だけど僕の状態はそれに構っているヒマはない。

痛いのだ。

とんでもなく痛いのだ。

こんな痛みは今まで味わったコトが無い。

痛すぎる・・・・・・。

一体何が起こったんだ・・・・・・。

「連れてくぞ」

野太い声がする。

そうか・・・コイツが僕のお腹を殴ったんだ。

痛い・・・・・・痛いよ。

何てコトをするんだ。

僕は身体をくの字に曲げて、それ以上は動けない。

それなのに、この野太い声の男は僕の腕を掴んで強引に引っ張り出した。

「さっさと連れて行け。先公どもに見られるぞ」

・・・・・・?

今の発言は高い声でも太い声でもない。

とすると、コイツはもう一人の男か。

「わかった」

太い声の男が答えると、僕は乱暴にも何処かに連れ去られた。















ドサッ

僕はゴミ袋のように投げ捨てられた。

ここはどこだろう・・・?

それほど歩いていた気はしないから、多分まだ校内のどこかだろうか。

「後は恵介にやらせればいいだろう」

「あぁ、じゃあ任せたぞ」

「オッケーです」

二人分の足音が遠ざかっていく。

どうやらこの場にいるのは僕と一人の男だけみたいだ。

「おい!」

しかもそいつは肌が黒くて甲高い声を発するヤツのようだ。

「うぅ・・・・・・」

意識があるだけ、ある意味拷問のようだ。

さっきの攻撃が未だに冷めない。

「昨日おめぇの友達をやったの、気付いたか?」

「・・・裕太を・・・・・・」

まさか、コイツ等が裕太をボコボコにしたのか。

「そいつだよ。柊 裕太。あまりにも生意気だったからつい手加減するのを忘れちまったぜ」

なんて男だ・・・・・・。

裕太をこれでもかってくらいに殴って、さらに足まで折って! 京脳が怒りをあらわにする。

「何だそのツラァ!!」

ドガッ!!

「うぐっ!」

痛めたお腹にまた強烈な、今度は蹴りの一撃をもらった。

そのおかげで僕はずいぶんと胃液を吐いた。

「あんまり上等こいてっとブチ殺すからな!」

高い声の男はそういうと去っていった。

僕はうずくまり胃の中のモノを吐き出しているコトしか出来なかった。

ただ、悔しくて、ムカついていて。

「僕が何をしたっていうんだ・・・・・・」

立つコトさえままならない。

そしてあっという間のコトに気を取られていて、何を考えていいかわからなくなってきた。

どうして僕は・・・。

どうして僕は、こんなトコロで倒れているんだろう。

朝は八木羅さんと笑っていたのに。

笑っていた時から、まだ5分も経ってない。

あまりにも厳しすぎるよ。

何で僕が・・・・・・。

イジめるのに理由なんて無いんだろうけど、

どうして・・・・・・。

どうして僕がこんなに・・・・・・。

「痛いよ・・・・・・痛いよ・・・・・・」

そのあまりの痛さに、僕は気を失いかけていた。

あの眩しかった光景も、全て遠ざかっていく。

僕はこのまま死んでいくのか・・・。

いや、きっと死んだ方が楽になれるのかもしれない。

現実は痛すぎて、現実はこんなもので。

傷つくコトばかりが現実なら、僕はもう・・・。

ふと、僕から視界と音が失くなった。




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