Melody




京!!

・・・うん?

京・・・京!!

誰かが僕を呼んでる。

「京!!」

「うわぁっ!」

僕は慌てて飛び跳ねた。

「・・・ここは?」

ベッドの上に僕は寝ていたらしい。

ベッド・・・?

あぁ、なるほど。

どうやらここは保健室なんだな。

きっと倒れた後誰かが運んでくれたんだ。

・・・・・・ようやく京脳が意識を取り戻した。

「・・・・・・」

「大丈夫か!?」

「裕太・・・・・?」

信じられない光景がある。

僕の目の前にいるのは、昨日さんざんやられた裕太だったのだ。

どうして?

・・・・・・あぁ、わかったぞ。

ここは天国で、裕太は先に逝ってしまっていたんだ。

そして僕もやっと追いついた。

そんな感じなんだろう。

心なしかフワフワした気持ちだし。

「お前もやられたのか・・・・・・くそっ!」

裕太はゴミ箱を蹴飛ばした。

あの世にもゴミ箱なんてモノがあるんだ。

・・・・・・気のせいか、そのゴミ箱は僕の部屋にあるキティちゃんのモノと一緒だった。

大事に毎回洗いながら使ってるんだから、あまり乱暴にしないでほしい。

きっとそれは僕がお空に持っていったものだからさ。

「・・・・・・京?」

「・・・・・・」

「どうした?まだ痛むか?」

「いや・・・・・・」

天国にしては、何だか空気が悪い気がする。

僕はちゃんと酸素を吸っているし、普通に喋っている。

これが普通なのだろうか?

「裕太」

「ん?」

「ここはどこなの?」

軽く遠回しに聞いてみた。

「何処って、お前の部屋だよ」

え!?

何で僕の部屋なんだ!?

だって僕は確かに、変な三人組にやられて、しかもその場所は学校だったはずだ。

それがなんで気が付いた時には裕太と一緒に僕の部屋にいるんだろうか。

「お前がアイツ等に絡まれてるの見て、心配になったからつけていたんだ」

「でも、どうして?病院は?」

「あんな窮屈な場所にいれるかよ」

裕太は軽い笑みを浮かべながら言った。

だけど、足には痛々しく包帯が巻かれている。

部屋をよく見ると、ドアの脇に松葉杖が二本置いてある。

あれが無いと歩けないんだ・・・・・・。

ふと、涙が浮かんだ。

「おいおい、どうしたんだ?」

「いや・・・・・・」

何だか自分が情けなくなった。

本当に、リスカとかじゃなくて、死にたくなったのだ。

恥ずかしくて、でも悔しくて。

生きているコトが申し訳無い、そんな気分だ。

「お前、アイツ等のコト知ってるか?」

「アイツ等?」

「お前が絡まれた三人組だよ」

「いや、全然知らないよ。いきなり殴られて、それからはもう・・・・・・」

口元が汚物まみれになったんだっけ。

「じゃあ、ちょっと説明してやるよ」

「うん・・・・・・でも、その前に聞きたいコトがある」

「ん?」

「裕太は大丈夫なの?」

「俺?当たり前だろー。ケガなんかしてもすぐ治るっつーの」

裕太はおどけてみせる。

・・・ウソだ。

裕太はケンカなんて全くしない人間なんだ。

だから、ケガをするコトに慣れているワケがないんだ。

・・・どうしてそこまでしてウソをつくんだろう。

「でまぁ、アイツ等なんだけど」

裕太が真剣な目つきになる。

「肌の黒い男が、西船橋 恵介(にしふなばし けいすけ)

 一個下なんだが、一年では相当強いらしい」

一年で強くても、二年にはそんなに敵わないのじゃ?

と言いかけたけど、また脱線しそうなのでやめよう。

「ちょっと背の高い男が、萩野 隆未来(はぎの たかみき)

 コイツは俺達と同じ学年で、一応二年では一番になるな」

う〜ん、同じ二年なのに全く知らないな。

「最後が、一個上の上佐賀 流斗(うわさが りゅうと)

 ・・・・・・この人には本当逆らわない方がいい」

急に裕太が弱気になった。

二人称が「ヤツ」から「人」に変わったところにそれが覗える。

「俺は萩野とはいい勝負してたんだけど、コイツが出てきた瞬間・・・・・・」

その瞳が表しているものは、まるで絶望。

アイツにはどんなコトをしようと勝てない、そんな感じだろうか。

しかし、全くケンカをしたコトのない裕太と萩野という男が互角だとしたら、

一体二年生の不良達は毎日何をして過ごしているのだろうか。

「・・・コイツのワンパンで、俺は足を折った」

背筋にゾクゾクするモノが走る。

・・・パンチで足を折った?

一体どんな腕力をしているんだろう。

物理的に考えれば、肉が貫通して・・・いや、グロイのでやめよう。

「いいか、西船橋はそんなに強くない。だけど萩野と上佐賀を見たらすぐ逃げろ」

「上佐賀って人は、どういう人なの?」

実際、あんまり記憶に無い。

「見ればわかる。あの人のオーラは、とんでもない」

オーラ、というコトは、雰囲気が強いってコトなのだろうか。

しかし、野太い声の男は出てこなかったのが気になる。

「ねぇ」

「ん?」

「声が太いヤツはどいつ?」

「声が太い?あぁ、多分萩野だろう」

「萩野・・・・・・」

「萩野にやられたのか?」

「どうもそうらしい・・・・・・」

「そうか・・・」

裕太は、何故だかガッカリしたような、それでいて安心したような顔をした。

まるで僕が勝ってはいけないような。

「そういえばさ」

さっきから気になっていたコトがあった。

「何で保健室じゃなくて、僕の家に?」

「保健室なんかじゃ、アイツ等の話は出来ないさ」

そんな理由で僕の部屋まで運んでくれたのか・・・・・・。

また目頭が熱くなった。

「おいおい、どうした?」

「なんでもないよ・・・」

僕は目の辺りを軽く拭う。

・・・そういえば、何か大事なコトを忘れているような気がする。

あ!!

そうだ、八木羅さんだ!

アイツ等に連れ去られてしまっていたら大変だ!

「そういえば、八木羅さんを見なかった?」

僕は珍しく真剣な眼差しを向ける。

「八木羅?あぁ、いや、見てないけど」

裕太が見てないというコトは、多分大丈夫、なのだろうか。

判断しにくいトコロだ。

「八木羅がどうかしたのか?」

「アイツ等が拉致したのかもしれない」

「何だと!?」

「いや、まだ推測だから分からないけど、玄関にいた八木羅さんが消えて、

 変わりにアイツ等が現れたんだ」

「なるほど・・・それなら合点が合うな」

「え?」

「俺に絡んできた時も、アイツ等しきりに八木羅のコトを話してたぜ。

 特に西船橋のヤツなんか、菜乎ちゃん菜乎ちゃんとか言っててな」

マズイぞ、八木羅さんが拉致られた可能性がかなり高まってきた。

「もしかしたら、八木羅の周りのヤツ等を消そうとしてるのかもな」

「え?・・・・・・というコトは」

僕達は顔を見合わせた。

「雪野さんが!」

「真咲が!」

僕と裕太は同時に立ち上がった。




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