Melody




「いたか!?」

裕太が走りながら聞いてくる。

「いや・・・」

学校に着いてから(昼休みで良かった♪)僕達はとにかく走り回った。

玄関・・・・・・廊下・・・・・・階段・・・・・・。

しかし、何処へ行けども雪野さんは見当たらない。

「後は何処に行ってない?」

裕太が息を切らしながら聞いてくる。

「・・・・・・」

京脳をフル回転させる。

「体育館は回ったっけ・・・」

体育館裏ではカップルがあんなコトやそんなコトを繰り広げていたっけ。

思わず見とれていたら裕太に頬を殴られたけど。

まぁ、男の性ってヤツだ。

それに裕太だってジロジロ見回していた。

とすると、僕が殴られた理由が・・・・・・っと、またまた脱線してしまった。

「う〜ん・・・・・・」

困ったな、困ったな。

早くしないと昼休みが終わってしまう。

いや、ちょっと待て。

僕は今日、無断で学校を休んでしまっているのだ。

だからこんなトコロをウロチョロしていたら明らかにオカシイ。

先生に見つかる前にとっとと退散してしまおうか。

・・・・・・違う、違うんだ京。

そんなコトを考えている場合じゃないんだよ。

今は雪野さんを探すコトが第一なんだ。

僕の授業の出席状況なんてどうでもいいんだ。

あ、いや、別にどうでもいいというワケじゃなくて、その・・・・・ゴホン。

京脳脱線は果てしなく続く。

いっそのコト京脳なんて死んでしまえ。

あ、死ねっていうか、うん、あのね、えっと・・・・・・もういいや。

こんなくだらないコトで脳内を賑わらせている場合じゃないんだ。

・・・こうなったら無だ。

僕は無になりきるのだ。

そうすれば、新たな考えが浮かぶハズだ。

・・・・・・無・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・。

・・・・・・。

・・・。

!!!

「わかった!」

昨日雪野さんの美しい曲を聞いた場所。

そして、初めて八木羅さんと会った場所。

そんなトコロは一つしかない。

「屋上だ!!」

僕は高々と屋上を指差した。

しかし、この場には誰もいなかった。

「・・・・・・あれ?」

裕太の影が無い。

「裕太?」

訊ねてみた。

・・・・・・・・・。

どうやら京脳が盛り上がっているウチに裕太は一人で行ってしまったらしい。

うーん、さすが僕の友達、頭の回転が速い。

ギギィィ

側にあるトイレのドアが開いた。

「おう、わかったか?」

裕太だった。

「・・・・・・・・・」

裕太・・・そりゃないだろ。

せっかく月9ドラマをも凌駕するテレビドラマチックな"最高の友達〜こんな人がいれば・・・〜"

を展開して、普段目立たない君に華を持たせてやったというのに。

いくらなんでも便所は無いだろう。

「屋上に行ってないよ」

「そうか!じゃあ行くぞ!」

裕太はジッパーをしめながら走り出した。

「痛ッ!挟んだ!挟んだぁぁ!!」

裕太が股間を押さえて飛び跳ね出した。

・・・はぁ。

一体この抑揚は何だろう。

悲しいというよりは、怒りに近い感情が沸き上がって来る。

拳が痛い。

歯がギリギリと音を立てる。

さぁその憎らしい顔を叩いてやろうかと思った瞬間、裕太は体勢を直した。

「よ、よし、行こう・・・・・・」

心なしか力が入っていない。

・・・僕はこんなのを友達と認めていたのか。

裕太は僕のピンチを救ってくれた。

裕太は僕の頼みを聞いてくれた。

裕太は僕を友達だと言ってくれた。

しかし、いくら何でもヒドすぎやしないか。

僕の目の前にいるのは、アソコ(+○毛)をジッパーに絡ませ巧みに跳ねる単なる気違いだ。

ひょっとしたら、俺のコトは置いていけっていう彼の信号なのかもしれない。

俺は実は足が折れているしヤバイから後は頼んだっていう。

そもそもコイツは足が折れているクセにとんでもないスピードで走るのだ。

僕だって遅くはないけど早くもないっていう平均的なスピードだけど、

コイツは足を一本不意にしても僕を遥かに凌いでいる。

・・・もうそれだけで十分評価出来る。

後は僕が頑張ろう。

いや!違う!

そうか、思い出した。

今僕達が捜しているのは雪野さん。

雪野さんと裕太は付き合っている。

つまり、なんとしてでも雪野さんを助けたいという(まだ状況はわからないが)

愛の力が働いているワケなのだ。

なるほどなるほど裕太君。

そこまで頑張っているなら、最後まで一緒に走ろうじゃないか。

「裕太」

「どうした?」

「ゴメン」

僕は今まで裕太のコトを誤解していた。

愛を知り愛に生きる、言わば青春街道をマッハ2で駆け抜けるうら若き青年。

そう、単なる変態じゃなかったんだ。

「何意味わかんねーコト言ってんだ。行くぞ!」

裕太は気力を取り戻したらしい。

「行こう・・・・・・!」

僕と裕太は最後の望みをかけて屋上へ向かった。




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