Melody




「キャア!」

屋上の扉に手をかけた刹那、痛々しい女の子の声が聞こえた。

「真咲!!」

ドガァァァァン

裕太はドアを蹴り飛ばす。

・・・しかし、ドアはビクともしていない。

「雪野さん!」

僕は至って普通にノブを回して屋上へ駆け込んだ。

後で裕太が顔を赤くしているのがよくわかった。

・・・ここぞって時くらい決めてほしいものだ。

でもまぁ屋上の扉は鉄製のカチンコチンのヤツだし、蹴りで開けられるほどヤワじゃないけど。

しかしそれくらい判断出来ないものなのだろうか。

まぁ、裕太だし、仕方無いか。

「雪野さん・・・って、アレ?」

僕の眼前には人という生物が存在していない。

おかしいな、確かに声はしたハズなんだけど。

とりあえず僕は辺りを見回した。

「・・・・・・」

人の気配はするものの、やはり姿は見えない。

ひょっとして落下してしまったのか!?

僕は手すりからグラウンドを見下ろした。

・・・誰もいない。

う〜ん、どういうコトだろう。

声はした、でもいない。

なんだか軽いなぞなぞを試されている気分だ。

答えは・・・・・・。

「真咲!!」

「ゆ、裕太・・・!?」

「そんなトコで何やってんだ?」

「うん、昼休みだし、ギターでも弾こうかな・・・って、病院はどうしたの!?」

「あぁ、あんな退屈なトコは抜け出してきたよ」

「ケガは?何だか足のギブスが痛々しいけど」

「真咲の為ならへっちゃらだよ」

「あはは!何言ってんのよ!」

状況のわからない僕を尻目に、彼等はLOVEオーラを120%フルで出してきた。

・・・僕は今、物凄く腹が立っている。

「あ、飯田君じゃん。どしたの?」

「・・・・・・いや」

僕は疲れきったその身体を地面に委ねた。














「だ、だからゴメンってば!」

雪野さんが懸命に謝ってくる。

「いや・・・・・・」

雪野さんはドアの上、つまりハシゴを上っていける踊り場に行こうとしていた。

そこに行くにはちょっとモロいハシゴを二つまたがなくてはいけないので、

軽く困難をきわめる。

そして無事一個目のハシゴをまたぎ終わり、さて最後の関門だわと上ろうとしたところ、

案の定、手を滑らせて落下したという。

・・・聞いていてバカバカしくなった。

僕達は雪野さんを助けようと必死で学校まで走ったのに、

当の本人は実に平和な昼休みを過ごしていた。

あぁ、この事実を今すぐ記憶から消し去ってしまいたい。

「まぁ、何事もなくて良かったよ」

裕太がフォローを入れるように口を開く。

確かに、雪野さんの身に何もなくて良かった。

結果オーライってコトで水に流そう。

「八木羅さんは?」

僕は念のために聞いてみた。

「菜乎?うーん、今日は見てないなぁ」

・・・どういうコトだ?

八木羅さんと雪野さんは一緒のクラスだし、第一今日の朝、

僕は八木羅さんと爽やかなアイサツを交わしていたのだ。

それが見てないとはどういうコトなんだ。

僕の心臓が確実に高鳴っている。

これは嬉しいとかじゃなくて、かなりヤバイ系の緊張感だ。

八木羅さんがアイツ等に連れ去られた確率が跳ね上がった。

何故アイツ等が八木羅さんを狙っているのかわからないけど、

かなり危険なんじゃないだろうか。

現に八木羅さんに近づいた(のか?)僕は、一撃でノックダウンしてしまった。

・・・実は八木羅さんって結構アブナイ人なんじゃないだろうか。

そっちのコトでも不安がよぎる。

八木羅さんと奴等が仲良しとは思えない。

「行かなくちゃ!」

僕は叫んだ。

「何処に?」

裕太が冷静に突っ込む。

しかし、今はそんなごく一般的なレスポンスに対応しているヒマは無い。

時は一刻を争うのだ!

「雪野さん!」

「え?」

「八木羅さんは普段何処にいる!?」

「普段・・・・・・屋上か教室だと思うけど?」

「ありがとう!」

僕はそれだけ言うとマッハ3のスピードで駆け出した。











駆け出した。駆け出したんだ。

でも勢いだけじゃどうにもならない。

一体八木羅さんは何処に・・・?

「はっ!」

京脳が閃いた。

「うん。悩んでる時に真咲がよく行く場所」

「うん。悩んでる時に真咲が・・・」

「うん。悩んでる時に・・・」

そうだ、そういえばそんなトコロもあった。

八木羅さんがそこにいるとは限らない。

でもそこしか残されていないんだ。

エコーしたというコトは、そこにいる可能性が極めて高いというコト。

十分だ。

よくやった京脳。

よく思い出した京脳。

僕は必要以上に血液を循環させ(たつもり)一気にスパートをかけた。

「待っててくれ、八木羅さん!」

京足(ニューフェイス!)は校門を軽やかに通過し、

まさに驚速といったスピードで(こんなオヤジギャグも言える程早い!)

あの思い出の場所(僕がそう思ってるだけかも)へ走っていった。




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