Melody




「・・・もう一回言ってみろ」

あわわわ・・・ヤバイよ八木羅さん!

「何度でも言うわ!私は飯田君の方がいいの!飯田君が好きなの!!」

八木羅さんは完全にヒートしきってる。

顔中真っ赤にして、今は可愛いというよりも頑張っているという形容詞がよく似合う。

・・・そんなコト言ってる場合じゃない。

八木羅さんの発言は上佐賀さんを完全に怒らせたんだ。

・・・実はちょっと嬉しいんだけどね。

小躍りしちゃうくらい♪

実際そんなコトしたら真っ先に殺されそうだけど。

「菜乎・・・」

「・・・・・・」

「よく言った・・・」

「えっ?」

上佐賀さんの眼がちょっと落ち着いた気がする。

「俺相手に、よくここまで奮闘した」

「・・・・・・ごめんなさい」

このまま和解(手をとりあって写真でも撮ったりするコト)って方向にいくのかな。

「お前が本気なのはよくわかった」

「ううん・・・・・・ごめんなさい」

八木羅さんは緊張の糸が解けたのか、軽く泣き始めた。

僕も緊張感がやっと消えて震えが止まった。

「悪かった」

「いいの・・・謝らないで」

「俺も最初から本気でやればよかった」

バキッッッッッッ!!!!!

僕の左肩に閃光が迸った。

「キャァァァァ!!」

別に音の割には痛みはない。

でも、肩から先の感覚も一切無い。

「俺はな・・・邪魔をする奴が大嫌いなんだ」

上佐賀さんが改めて僕の方を向いた。

バキッッッッッッ!!!!!

「やめてぇぇ!!」

「菜乎!よぉぉく見ておけ!俺が自ら手向けをするのは滅多に無いぞ!!」

僕の両肩から先の感覚は無くなった。

骨を砕かれるっていうのはこういうコトなのか?

教えてくれ、裕太。

・・・京脳がイカれかけている。

「死ね!!」

「ダメッ!!!」

ドゴッッッッッッ!!!!!

僕の顔目がけて一つの光が飛んできた。

だけど、それより早く八木羅さんの顔が飛んできた。

八木羅さんが僕の方に吹っ飛ぶ。

その衝撃で僕も吹っ飛ぶ。

・・・何がどうなったのかわからない。

「菜乎・・・!!」

「上佐賀君・・・暴力は・・・・・・ダメ・・・・・・」

「菜乎、菜乎!!」

どうやら八木羅さんが僕をかばったらしい。

「飯田・・・・・・貴様!!」

「やめてよ・・・・・・そんなコトしても、私、喜ばないよ・・・・・・」

八木羅さんが涙を落とす。

見れば後頭部からかなりの量の血が流れている。

最後ちょっと確認出来たんだけど、あの光は上佐賀のパンチだったんだ。

あまりに速すぎて光が光ったようにしか見えなかった。

それに、この出血量。

上佐賀さんのパンチは尋常じゃない。

そういえば・・・裕太が言ってたっけな。

あの人のワンパンは気をつけろ・・・って。

ダメだ、意識が遠のいていく。

今学期に入って、何回目・・・だ・・・?

京脳・・・ゴメンよ。

知らない間に殴られてたんだ。

肩の感覚も無いよね。

八木羅さんも、ゴメンナサイ。

全然、守れなかった。

ウソをついたよね。

僕は・・・・・・ダメ、だね・・・・・・。


















目が覚めた。

場所はさっきと変わってないみたいだ。

「二人は・・・・・・?」

僕は勢いよく起き上がった。

「・・・・・・?」

周りには誰も居ない。

つまり、一人でバカみたいにブッ倒れていたってコトか。

・・・なんか寂しいな。

「あれ・・・?」

肩が砕かれたハズなのに、感覚が戻っている。

でも痛みはしっかりある。

ちょっと肩に触ってみた。

「痛い痛い痛い!!!」

触るだけで痛すぎる。

何てこった。

でも折れてる様子はないようだ。

・・・じゃあ一体なんだったんだ? いや、その前に二人は何処へ行ったんだ?

まずはそれを最初に疑問に持たなきゃ。

「・・・・・・」

京脳をフル回転させる。

・・・何もわからない。

「情けない・・・」

でも、さっきの出来事はまるで夢だったかのような感覚。

何が起こったのか、細かいコトがよく思い出せない。

「帰ろっか・・・な」

それもかなり虚しい。

だって、何が起こったのかわからないのに、何で倒れてなきゃいけなかったんだ。

あまりにも理不尽だ。

「確か、上佐賀サンに出くわして・・・」

そこまではいい。

だけど、その後何があったのか。

殴られたコトくらいしか・・・・・・。

「・・・・・・」

殴られておかしくなったのだろうか。

いまいち自分の名前も口に出せない気がする。

「八木羅さん・・・・・・」

そういえば、八木羅さんが何か焦ってたなぁ。

何に焦ってたんだろ。

「京ーーー!!」

何だか遠くの方から腑抜けた声がする。

「大丈夫かーー!!」

なんとなく聞き覚えのある声だ。

・・・・・・誰だっけ?

「京!!」

声の持ち主が視界に入った。

僕の目の前で呼吸を整えている。

「探したぞ!!」

「・・・裕太?」

そうか、裕太か。

ちょっと前に一緒にいたハズなのに、随分と久しぶりな気がする。

「お前、上佐賀さんに何された?!」

すっとんきょうな声で聞いてくる。

「殴られた・・・のかな」

「大丈夫だったか!?」

肩を触りながら言ってくる裕太がムカついた。

「そこ、痛いんだ」

「肩を殴られたのか?」

「多分」

「多分じゃわかんねぇ!」

なんか、裕太って和むな。

存在が幸せそうだ。

「とりあえず、帰ろうよ」

実際、立ってるだけでちょっとツライ。

「病院に行かなくて・・・・・・」

「問題無いよ」

僕は笑顔で応えた。




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